『久保はてな作品集』10号

8 課題 夏休み合宿「連作小説」をつくる



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ゆうさんごちゃまぜHP「久保はてな作品集」   2025年12月03日(水)第10号

 文芸部久保はてな君の作品8。課題 夏休み合宿「連作小説」をつくる

 今号は2年の夏休みに実施した合宿と連作小説について紹介します。
 久保はてな君は「ゲーム系冒険小説」を担当し、「白亜の王子」として完成させました。

 その前に文芸部2年の目玉企画(?)、夏休みの合宿について以前説明した部分を再掲します。

 文芸部が「合宿」なんて前代未聞のことかもしれません。
 運動系の部活はサッカーや野球などチームワークを必要とするところが合宿する。文系では吹奏楽なども合宿して朝から夜まで練習する意味がある。通学では全員そろわないことが多いからです。
 しかし、ひとりひとりただ書くだけの文芸部はチームワークと無縁だから合宿なんか必要がない……と誰もが思うところ。

 そこで考案したのが連作小説です。かつて昭和の同人誌などで行われていた創作訓練。
 校長にかけあって「ワープロ教室で朝から夕方まで連作小説をやるので合宿した方がいい」として認めてもらいました。

 幸いなことにY高の合宿はだいたい学校近くの国民生活センターで行われていました。食事付き2泊3日の費用はそれほど高くないし、学校まで歩いて来られるので、ワープロ室で執筆活動ができます。

 もっとも、ワープロ室の活動なら別に合宿しなくても可能。(教師以外の)読者は「よくまー認めてくれたなあ」と思われるかもしれません。
 それを言い出すと、他の部活にしても(体育館以外の)活動は朝から夕方までであって夜はできない。必要かどうかで言うなら、運動系でも宿泊しなくていいクラブはあります。

 実は高校の合宿というのは夏休みの集中練習以上に「友情を体感、獲得する」意味合いがあります。

 放課後の練習では部員同士が家族や進路など深い悩みを打ち明けることは少ない。だが、一晩泊まれば、いろいろなことを語り合える。「好きになった人がいる」など思わぬ告白も出る。話が弾めば徹夜になることだってある。

 意気投合したり、誰にも言えなかった悩みを打ち明けることで、やっと親友と呼べる人ができた――こうした体験は自宅以外で泊まるから得られるものであり、合宿最大の効能と言えます。

 校長は当然このことを知っています。だから、私が「ブンゲーブでも合宿したい」と申し出ると、「必要ないだろ」なんてことは言わない。二つ返事で「どうぞどうぞ」てなもんです(^_^)。

 夏合宿について久保はてな君は後の作品に以下のように書いていました。
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 「連作小説」とは夏休みの三日間、朝から夕方まで集中的に行われた小説制作だ。学校に部員全員が集まり、リレー小説を作った。部員10名全員参加して学校近くの国民生活センターに2泊した(朝昼夕の3食付き)。

 そのときS先生が出した課題が例のごとく風変わりなものだった。「はちゃめちゃ系学校小説」だの「タイムトリップ系SF小説」、「ゲーム系冒険小説」、「純情コミック系恋愛小説」などと題材が設定され、部員はくじ引きでそれぞれ分担を決めた。

 まず各自が合宿初日までに冒頭1頁(原稿用紙4枚)から数頁分を書いておく。それに続けてローテーションしながら、次の人が書き継いでいった。持ち時間は一人一時間半。結局完成まで丸三日かかった。

 ワープロ室にはエアコンがない。暑かったし、決められた時間の中で、ストーリーが崩れないようつなぐのは大変だった。中には話の流れを全く無視する者もいて、顰蹙どころか「どうしてこうなるんだ」と非難ごうごうの時さえあった。

 小説のラストは冒頭部の作者が再度分担できるようにローテーションを組んだ。途中経過は見ない約束だったので、最終的に自分に回ってきた作品は思いもかけない方向に進んでいることもあった。
 するとまた最初の作者から非難の雨あられ。しかし、この企画はすごく盛り上がったし、結構みんな楽しみながらやっていた(^_^)。
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 以下久保はてな君の作品。冒頭「1」の部分を掲載します。

 作品全体(原稿用紙80枚)は以下のPDFファイルをご覧ください。
 なお、連作小説はその後「各自全体の流れや伏線を入れるなど修正して自作とすること」と指示して合評は四ヶ月後に行いました。よって、これは久保はてな君修正後の作品です。

  久保はてなと11人の仲間による連作小説 『白亜の王子』

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【 久保はてな作品集10 】課題 夏休み合宿「連作小説」をつくる

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 白亜の王子 ――カイの冒険物語正伝――    久保はてな


 今となっては遠い遠い太古の話、白亜の城にカイという名の王子が暮らしていた……

  1

 緑の草原がなだらかな丘陵に広がる。遠くの畑で人々が働いている。その向こうには白い壁の古城。雲雀の声が春を告げていた。
 雲一つない抜けるような青空の下で、二羽の巨大な鳥が空中を飛び交っている。
 いや、あれは鳥ではない。鳥の形をした飛翼機。王家に連なる者にしか乗ることを許されぬ聖なる飛翼機だ。

 まだ幼さの残る顔立ちの少年が二人、狩猟服を身につけ翼の背に跨(またが)っている。
 白い肌の少年は王子カイ。今年十五を迎えた。褐色の肌の少年は王子の乳母子トーラス。
 彼らはまるで地上を疾駆する竜のように飛翼機を操っていた。
 今しも二機はうなりを上げて離れ、再びブーメランのように旋回して低空ですれ違う。せつな一方の飛翼機からカイが蹴落とされて落ちた。
 トーラスが空中で小気味よく笑う。カイはくやしそうに空を見上げた。蒼く澄んだ瞳に飛翼機が映る。

 そこへ駆竜(くりゅう)を走らせて乳母のトロテがやって来た。
「カイ様、長老がお呼びですよ!」
 トロテはカイに呼びかけると、竜から下り、空の少年に拳を突き上げた。
「こら! トーラス、降りてらっしゃい。また王子様を痛い目に遭わせて。今度という今度は許さないからね」

 しかし、トーラスは「あっかんべー」をすると、「先に行ってるぞー」の声を残してレイヴァン城へすっ飛んで行った。
 トロテはなお罵った後、カイに近寄り介抱しようとする。
「大丈夫。これくらいのことで怪我なんかしないさ」
 カイはそう言って立ち上がると、トロテの手を振り払うようにして飛翼機に飛び乗る。機はぐいと浮き上がり、猛スピードでお城に向かった。……

「おじいさま、お呼びですか」
 そこはレイヴァン城の最上部、小さな部屋に祭壇がしつらえられている。祭壇背後の壁には真っ赤な太陽と白い鳥の模様が描かれ、祭壇に同じく鳥の形をした黄金製の神の像が祀られていた。像は小さく片手の大きさもない。
 部族最長老のカイエスは早六十の坂を越え、白髪と白髭に覆われていた。
「カイよ。いよいよ神の声が下った。神は使者としてお前をご指名になられた」

 連日長(おさ)たちが最高会議を繰り返していたことは民や衛兵が話題にしていた。その内容が何か切羽詰まったものであることも漏れ聞こえていた。
 しかし、自分にとっては突然の話なのでカイは驚いた。つい先頃成人式を済ませ、飛翼機もやっと乗りこなせるようになった程度だ。

「これから語ることはお前にとってにわかに信じられぬことかもしれぬ。実はわしら長も半信半疑なんじゃ。だが、最近の天候異変と合わせても神のお告げに嘘はあるまい。
 お前にはまだ早いが、王家に連なる者として神の前で我らに迫り来る危機を明かそうと思う。ついて参れ」

 カイエスは祭壇の黄金の鳥像(ゴールドバード)を手にすると、後ろの壁に向かって像を突き出した。すると壁が半分の高さの所ですっと左右に開く。その先はさらに小さな部屋だった。カイの初めて見る部屋だ。中には何もない。

 二人が部屋に入るとカイエスは壁の取っ手を右に回した。突然部屋全体に振動が走り、カイは空中に浮き上がるような感覚に襲われ、危うく倒れそうになった。
 振動と奇妙な摩擦音に暫く包まれた後、足が重くなって振動は止んだ。反対側の扉が左右に開く。

 一歩踏み出すと、そこはがらんどうの巨大空間だった。カイには何が何だかわけがわからなかった。このお城のどこにこんな巨大な部屋があったのか。しかも、薄暗い部屋を見回せば、壁全体が剣の刃に似て金属質の光沢を放っている。
 カイエスはさっさと歩き出す。カイも後を追った。どこからかひんやりとした風が流れてくる。暫く歩いた後、目の前に姿を現したのは巨大な建造物だった。
「これが……神じゃ」カイエスは言った。

 カイは神の姿を見上げた。高さが城の半分はありそうな巨大建造物。全体が黄金色に輝き、一つ一つの固まりに微かな明かりが明滅している。青く、赤くその光は瞬く。
「これが……神なのですか」
 にわかには信じがたい。人の姿ではなかったのか。

「そうじゃ。お前もいずれ神の声を聞くときが来よう。しかし、今それを許されておるのはわしだけじゃ。よってわしが神の声を伝える。
 実はこのアトランの島……いやこの星の全てが今や滅亡の危機に瀕しておる。それが神のお告げなのじゃ」
「滅亡の危機?」

「そうじゃ。この星は理由はわからぬが極地の氷河が溶け始めておる。なおかつ巨大隕石がこの星に迫っている。神は隕石が約一年後サウス氷河に墜ちると予言した。衝突による黒煙は星を覆い尽くし、極寒の冬が数十年も続くじゃろう。生物は全て死に絶える。
 しかし、その前に溶け出したサウス氷河が海面を百ハーン(百メートル)上昇させるとのことじゃ。我がアトランは海底に沈む……」

 ウッソーと言いたいのをカイは辛うじてこらえた。そんなことがこのアトランで、この穏やかな地で本当に起こるのだろうか。民に話しても誰も信じないだろう。「巨大な石が降ってくるって? 空を見てみろ。どこにそんな石が浮かんでる? それはどうやって空に登るんだ?」などと言うに決まっている。信じる者は一人もいないに違いない。しかし、この神の姿を見、そのお告げを聞けば、あるいは信じてくれるかもしれない……。

 カイエスは続けた。「王家に連なるお前だけには話しておく。実はこのアトランの島はスター・トゥルースと言う名の巨大な比翼機じゃ。星々の間を自由自在に飛ぶ乗り物なんじゃ。
 ここは城の地下五〇ハーンの土の中。我々の祖先は今より六百年前この星にやって来た。祖先は百年間スター・トゥルースの上に土を運び、山や湖を作り、植物や木々を植えた。そして、今から五百年前祖先は船を出た。以後畑を耕し穀物や野菜を作り、原始文明をスタートさせ、漸くこの星に住み着くことができたのじゃ」

 カイにとって祖父の話、つまり神の声は驚きの連続ばかりだった。祖先の苦労は歴史で学んでいたが、まさか空の果てからやって来たとは思いもしなかった。
 カイは疑問を口にした。「しかし、海を越えた異境の地には居住可能な他の大陸があると聞きます。なぜ、そこに住まなかったのですか。これから行くことはできないのですか」

「それができぬのじゃ。この星の重力は今はもう消滅した我が母星の十倍はある。このスター・トゥルースが適度な反重力地場を作り出しておるから、われわれは立っていることができる。アトラン以外の地に行けば、わしらは地面に這いつくばって暮らさねばならぬ」
「そうですか……」
「もはや猶予はない。アトラン島をスター・トゥルースとして再始動させねばならぬ」
「六百年も経ってこの船は動くのですか」
「わからぬ。しかし、神は動くと言っておる。わが祖先は不朽の金属でこのスター・トゥルースを建造したらしい。だが、問題はこの船を起動させる鍵じゃ」

 カイエスは巨大建造物の一隅、机のような所にカイを連れていった。机上には大小のボタンとともに、はめ込み式の穴が五つあった。カイエスは手にしたゴールドバードをその一つに填めた。かすかに震えるようなうなりが起こり、すぐにやんだ。
「五つの穴全てに鍵をはめ込まねば、スター・トゥルースは動かぬ。残りは四つ。それはここにはない。

 今から五百年前我々は船を出て五部族に分かれた。そのときそれぞれの部族は守り神としてゴールドバードを持っていった。祖先はまさかこの船を再び動かす時が来るなど考えもしなかったのじゃろう。
 だが、泣き言を言っても始まらぬ。残り四つの黄金の鍵は他部族の長が持っておる。各部族はそれを守り神として大切に祀っているはずじゃ。果たして事情を説明してもたやすく渡してくれるかどうか。
 我らが住むこの地は聖なる地ということで鎖国状態じゃ。ゆえに、それら部族と交流がないまま現在まで来てしまった。あるいは、もう各部族の性質は変わっておるやも知れぬ」

「しかし、おじいさま。私はこの神の姿を拝見し、不思議を目の当たりにしたので、おじいさまのお話を信じることができました。私が他部族の説得に出向くとして、一体どうやってこの話をその人たちに信じさせるのですか。信じてくれるでしょうか。いや、それより各部族の長老を呼び、この場所で事情を説明した方が早いのではありませんか」

「それはできぬ。このスター・トゥルースを操縦できるのはわしら部族の王家だけじゃ。だが、証拠は見せる。このゴールドバードじゃ。お前はこれを持って行け。それは神の指示でもある。他部族の古き教えに『黄金の鳥の像を持ちたる者、神の使者として崇め奉るべし』とあるはずじゃ。ただもはや五百年が経過した。果たして効くかどうか。もしも鍵が集まらなければ、我がアトランは海の底に沈む……」

 それから二人は城最上部の祭壇の間に戻った。
 カイは上昇の部屋でなぜ自分が選ばれたか考えていた。王家の嗣子としてゴールドバードを持てるのは自分しかいないからか。だが、自分にそんな重要な任務がつとまるだろうか。それにもう一つ聞きたいことがあった。鍵が五ケ集まったとして一体何人の人間がスター・トゥルースに乗れるのだろう。それは聞くのが怖いような質問でもあった。

 祭壇の間でカイエスはアトランの地図を広げた。海の中にぽっかり浮かぶ島。カイには全体がどの程度の大きさなのか見当もつかなかった。
「中央が我がレイヴァン城、鳥族の聖地じゃ。北に獣族、東が虫族。虫族は獣族の傘下と言っていい。最も野蛮で攻撃的なのはその獣族じゃ。そして、西の湿地帯は水族のエリア。これは友好的なので言うことを信じてくれるじゃろう。南の雷が荒れ狂う地が……」
 そのときカイエスは言いよどんだ。

「南は何です? もっと強敵なのですか」とカイ。
「いや、南は雷族の地。これも攻撃的じゃが説得次第かもしれぬ」
「そうですか」
「それぞれの境界線辺りには宿場町がある。交易も行われているはずじゃ。お前は初めて訪れることになる。アウトローとのいざこざや妙な誘惑が多いやもしれぬ。任務を忘れるでないぞ」
 そう言ってカイエスはカイにゴールドバードとアトランの地図を手渡した。
「頼んだぞ、カイ」

 鳥の像は小さいのにずっしり重い。カイは地図を油紙に包み、二つを皮のずた袋に入れて腰に下げた。
「わかりました。何とかやってみます。時間はどれくらいあるのですか」
「一年あるかどうか。ただ幸いなことは飛翼機が使える。他部族は持っておらぬからの。移動はかなり早くできるはずじゃ」
「トーラスを連れて行ってもよろしいでしょうか」
「うむ。トーラスは役に立とう。連れていくが良い」
「ではおじいさま。お体を大切に」
「頼んだぞ」

 カイエスは隣室に向かい、カイは見送った。するとカイエスはドアの取っ手に手をかけ、やや躊躇した後向こう向きのまま口を開いた。
「カイ……お前は自分をずっと一人っ子だと思っておったろう。そして、父も母もお前が子どもの頃に亡くなったと聞いたはずじゃ。しかし、本当は父も母も生きておる。それに兄と妹が一人ずついるはずじゃ。四人はお前を残してこの地を去った。今頃どこでどうしているやら。あるいは離ればなれになったか。いずれにせよ、どこかで巡り会うやもしれぬ……」
 カイの顔から血の気が引いた。初めて聞く話だ。しかし、カイエスはカイの質問を封じるかのように、そのまま部屋を出て行った。 (続く)
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 冒頭にしては「長すぎる」と部員からクレームが出ていました(^.^)。
 しかし、これは彼の戦略だったようです。
 2以下は他部員が書き継ぎ、ラストをはてな君がまとめました。
 どこから他部員による実作か推理しながら読めば面白いかもしれません。
 ビミョーな表現の違いが見えます。
 続きは以下のPDFファイルをご覧ください。

  久保はてなと11人の仲間による連作小説 『白亜の王子』(PDF)


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 最後まで読んでいただきありがとうございました。

後記:11月28日の大相撲千秋楽ご覧になりましたか。私は安青錦が勝つ瞬間を見てなぜかうるうるっと来ました。
 故郷ウクライナが大国相手の戦争で悲惨な状況になっているとき、はるばる日本に来て厳しい稽古に耐え、とうとう初優勝を成し遂げた。
 素晴らしい。おめでとうございます。「ヴィターュ!」
 安青錦の本名はダニーロ・ヤブグシシンと言うそうです。「ヴィターュ!」はウクライナ語で「おめでとう」。

 ダニーロさんは2022年2月ロシアによるウクライナ侵攻が始まった年の4月に来日。23年初土俵からわずか14場所、21歳8ヶ月での優勝でした。
 今年初場所新入幕、4場所続けて11勝4敗。今回初関脇で直ちに優勝だから天性の相撲取り(?)と言えるかも。
 きっとウクライナの人たちに勇気と励ましをもたらしたと思います。


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