言うことを聞かない――について


 言うことを聞かぬ聞かぬと言う前に 子の言うことを聞く親なりや?



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ゆうさんごちゃまぜHP「狂歌教育人生論」        2005年  6月10日(金) 第55号


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 (^O^) ゆとりある人のための5分エッセー (^O^)

 【 言うことを聞かない――について 】

 (^_^)今週の狂短歌(^_^)

○ 言うことを聞かぬ聞かぬと言う前に 子の言うことを聞く親なりや?

 私の故郷大分県を横断する国道210号線は、別府から湯布院、玖珠(くす)をつなぐ大動脈です。道は片側一車線でお世辞にもいい道とは言えません(^.^)。
 しかし、別府から玖珠まで、山を上っては下り、また上っては下る。鶴見岳や由布岳など連山を遠くに眺め、山間や大平原の素晴らしい景色を堪能しつつ走ることができます。
 この国道の途中――湯布院と玖珠(くす)郡の中間に水分(みずわけ)峠というのがあります。分水嶺という言葉があるように、水分峠は210号線で最も高いところです。

 私は3月末に、別府兄宅から玖珠郡九重(ここのえ)町の実家へ戻るべく、車を運転していました。ちょうど正午近くにこの水分峠を通ったので、ドライブインでうどんでも食べようと、立ち寄ることにしました。
 そのとき以下のような状景にお目にかかったので、それを紹介したいと思います。

 その店は窓際が数メートルにわたって一人がけ用のテーブルでした。間隔をあけていくつかイスが置かれています。私はそこの右端に座って外の景色を眺めながら肉うどんを食べました(^o^)。
 同じテーブルの左端には、すでに一人の女性が壁を向くようにして横向きに座っていました。私と彼女の間には誰もいませんでした。
 しばらくしてテーブルの左端に4歳くらいの男の子がやって来ました。
 男の子はその女性の子どもなのでしょうか、彼は女性のすぐ隣のイスに座ろうとしました。
 イスは長テーブルの中に納まっています。イスの座席はその子の腰よりちょっと高いくらい。自力で座るにはきつそうに見えましたが、男の子はイスによじのぼろうとし始めました。
 初めは横からイスの背もたれに手をかけ、足をかけ上げるようにして。しかし、うまくいかない。次にテーブルの下に潜り込むようにして背中からよじ登ろうとする。これはかなりきつそう(^.^)。

 その子は足腰がしっかりしているように見えました。だから、誰かがイスをちょっと出してやれば、自力で座れるのではないかと思いました。あるいは、その子自身が自分でイスを引き出す知恵があれば、たぶんよじ登って座れたでしょう。
 彼は何度も何度も試みました。しかしうまくいかないので、次第にいらだつような声を上げ始めました。

 男の子の向こうにはその子に背を向けるような形で女性が座っています(後で母親とわかったので、母と書きますが)。
 その間母親は一度もその子をふり返りません。その子の次第に大きくなる奇声は聞こえていると思われるのに、全くふり返らないのです。
 私は妙だなあ、母親じゃないのかしら、あるいは何かしているのかなと思いました。
 何かしているとしても、自分の子どもの妙な気配と声が聞こえれば、ちらとでも後ろを振り向くだろうに――と私には不思議な感がしました。

 男の子はもうかれこれ数分近くイスによじのぼろうと悪戦苦闘しています。
 時にはイスを離れ、地団駄踏んで奇声を発します。私には「誰か助けてよ」と叫んでいるように思えました。それでも母親はふり返りません。
 どうも母親は赤ん坊を抱いているようです。その向こうが壁なので、あるいは赤子にお乳をあげていたのかもしれません。
 にしても、彼女はとうとう一度もふり返ることはありませんでした(-_-)。

 男の子から1メートルほど離れたところには4人がけのテーブルがありました。

 そこに若い男性が一人立っていました。彼は携帯電話を手にしてなにやらやっていました。メールを読んでいるのか、打っているのか。とにかく彼もまた男の子の様子には全く無関心でした。携帯に集中してその子を見やることもありません。
 私はこれも不思議で、その子の父親じゃないのかしら、と思いました(その後父親とわかりました(^.^)。

 男の子のいらだちの行動と奇声はますます大きく激しくなりつつあります。
 このままでは幼いながら、ぶち切れるのではないか、と私はうどんをすすりつつ(^_^;)、はらはらしながら見ていました。

 やがて若い父親は男の子の奇声と、イスによじ登ろうとする様子にやっと気づいたのか、まず「何をしておるんだ」みたいな言い方をしました。男の子の悪戦苦闘開始からすでに数分は経過していたと思います。やはり彼の目には息子の姿が映っていなかったのです(-.-)。
 幼い息子が甘えた声で「座りたい〜」と言うと、彼は「座らんでもいい」というようなことを言いました。息子はいやいやをしてまたイスによじのぼろうとします。しかし、やはり座れずに奇声を発します。
 ここまで来てやっと父親も「これを出せばいいんじゃ」とイスを長テーブルから出してあげたのです。

 こうして男の子はイスによじ登り、ようやく座ることができました。
 彼は足をぶらぶらさせながら、喜びを露わにしていました。
 若い父はまた携帯に集中しました。

 この父と子の一部始終の間も、やはり母親はふり返ることなく、向こうを向いたままでした(^.^)。

 それから数分後彼女が向きを変え、赤ん坊を抱いていたとわかったのです。そして、若い夫に何か言いながら立ち上がりました。出発しようとでも言ったようです。そして、さっさと行ってしまいました。
 夫は息子に「行くぞ」と言いました。
 しかし、男の子は足をぶらぶらさせ、テーブル上の物をさわりながら、イスから降りようとしません。
 父親は再度息子の名を呼んで「行くぞ」と言いました。
 それでも、男の子は言うことを聞きません。
 若い父親はさらに三度、四度同じ言葉を繰り返したあと、叱りつけるように言いました。
「どうしてお前は俺の言うことが聞けんかねえ」と。

 私はあっけに取られました(・o・)。
 そして、その子の内心の声が聞こえたような気がしました。

「あんたがオレの言うことを聞いてくれないからだろうが」と。

 ……私には男の子がそう言っているように思えたのです。

 この状況を眺めた後、私は複雑な気持ちを抱きました。
 で、浮かんだのが次の狂短歌でした。

 言うことを聞かぬ聞かぬと言う前に 子の言うことを聞く親なりや?

 しばしば親は言うことを聞かない我が子に対して「なぜ私の言うことが聞けないんだ」と怒鳴ったり、叱ったりします。
 しかし、その前に親自身が、我が子の言うことをきちんと聞いてあげる親だろうか――と「子の言うことを聞かない」典型的な親の例を見て思ったのです。

 その若い父親は子に対して自分でなんでもやらせようとするタイプのようでした。もちろんそれは自力・自発の心を育てるために大切なことです。
 しかし、注意して見つめていれば、子はもう自力ではどうすることもできない状況でした。
 だから、奇声を発して必死に助けを求めていたのです。対して父も母も我が子に無関心で、自分のことに忙しかったようです。

 もちろんこの反対もありえます。
 もし子が要求するまま、親がすぐに椅子をずらしてやったり、抱えて座らせたとしたらどうでしょう。その子はなんでもすぐに親に頼ろうとして自立できない子どもに育つ可能性があります。要は親がそれを見極めることができるかどうかでしょう。
 しかし、少なくとも我が子をしっかり見つめていないと、子どもの窮状に気づかないままです。

 ところで、私ならこの場合こうします(^_^)。

 私はイスによじ登ろうとするその子の様子をしばらく眺めます。そして、子どもが自力では難しいと見れば、そばに行き何をしてほしいかを聞きます。それからイスをずらせば登れると教えます。彼がその後それをやり遂げたら、「よく座れたね!」と言って誉めるでしょう。
 もしまだイスをずらしても座れないようだったら、手伝って座らせます。

 もちろんやり方は人それぞれです。ただ大切なことは、子どもの様子をいつもしっかり見つめていることだと思います。
 子どもが「もうこれ以上はできない」と困っていたら、助けに乗り出すことが大切だと思います。
 親が子をしっかり見つめ、子の言うことをしっかり聞いていれば、子どもは必ず「親の言うことを聞く」と思うのです(^_^)。


 ○ 親が子を助けてくれる親ならば 子もまた親を助けにくるさ


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 最後まで読んでいただきありがとうございました。

後記:今号よりしばらくマイコマーシャルを巻頭に掲載します。ご容赦ください。なにしろこちらが本式の仕事なものですから(^_^)。
 ところで、ニッポンサッカーがワールドカップ出場を決めました。おめでとうございます。去年のアジアカップ優勝といい、なんとなく神がかり的だったと言ったら言い過ぎでしょうか(^_^;)。今度もぜひドイツ本戦の予選リーグを突破してほしいものです。(御影祐)



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