○ これからの柔よく剛を制すとは 相手有利の組み手でも勝つ!
ゆうさんごちゃまぜHP「狂歌教育人生論」 2012年 10月 12日(金)第 147号
秋も徐々に深まって実家近辺ではすでに稲刈りが終わりました。
今月初めから裏庭で金木犀が金色の芳香を放っています。
久しぶりに毎日眺めたのでわかりましたが、金木犀の花って最初は淡いだいだい色でそれが徐々に濃さと深みを増すようです。そして、はらはらと散ります。
前回その様子を眺めたのは父が亡くなる前年のことでした。早いもので今年一月に七回忌を終えました。私はそのとき金木犀の花の変化に気づかないままでした。見ていたようで見ていなかったのでしょうね(^_^;)。
さて、今号も(もはや時代遅れの話題のような)ロンドンオリンピックです。不甲斐ない結果に終わった柔道について一席論じてみました。「ヘーイ、ジューー。ドンメィッキッバー(^_^)」
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(^_^)本日の狂短歌(^_^)
○ これからの柔よく剛を制すとは 相手有利の組み手でも勝つ!
ロンドンオリンピック開会式ではポール・マッカートニーがビートルズの「ヘイ・ジュード」を歌いました。
私はそれを見たとき「おおー柔道はほんとに世界のスポーツになったんだなあ。その象徴かあ」と思いました。
ところが、この歌よく聞くと「ヘイ・ジュードォー」ではなく「ヘイ・ジュー」なのです(英語だと[Hey Jude])。「ド」は「ドゥ」とかすかに聞こえるだけ(^.^)。
ちなみにこの歌の歌詞は「ヘイ、ジュー。落ち込むなよ。悲しい歌も少しはましにできるさ。
彼女を君の心に受け入れるのさ」に始まって「どんなにつらい時でもヘイ、ジュー、思い出して。全てをひとりで背負い込むことはない」など、彼女への恋心というか、つらい現実といかに戦うか――その心構えを歌っています。それを「JUDO」に象徴させたのでしょうか。つまり、ビートルズは「柔道」そのものを歌ったのではないと言えそうです。
そして、今回のオリンピックJUDOを見終えたとき、世界に広まったのは日本柔道ではなく、「JUDO=レスリング柔道」だったんだと再確認しました。
オリンピックのJUDOがレスリング柔道になってしまったことは、日本人なら誰でも感じていることでしょう。今までもオリンピックのたびに《レスリングJUDO》を見せつけられました。対して日本選手が《柔道》で勝つ様も見てきました。
しかし、今回ほど《JUDO》と《柔道》の違いを感じさせられたこともなかったような気がします。奇妙な場外判定員の存在も明るみに出て審判の意味とか、「なにそれ」の奇妙な判定変更もありました。
しかし、当初は日本選手の活躍が期待されていたと思います。
と言うのはレスリングJUDOへの反省から、数年前「最初に両足タックル」が禁止されたからです。あれこそレスリングJUDOの最たるものでした。また、組み手に関しても「故意に組まなければ減点対象」となりました。
タックル禁止だけでも柔道にかなり近づいたと思ったし、「組めば強い」日本選手が活躍するだろうと思ったのです(^_^)。
ところが、いざ試合が始まってみると、なかなか組めません。特に軽いクラスほど組み手争いばかりです。そのうち日本選手に指導が取られ、攻めきれないまま僅差で負けたり、強引に攻めにいって返し技で負けたりする例が続きました。
しかも、素人の見立てながら外国選手の勝ち方に美しさがないと感じました。たとえば、相撲の押し倒しみたいなもんで、ただ力任せに倒して「効果」を奪う。後は技をかけた振りをしつつ、時間をつぶしてポイントで勝つ……まさにレスリングJUDO(^.^)。
見ていてとてもつまらないと思いました。
豪快な投げ技や足技で「一本!」、あるいは「技あり!」を奪い合う柔道ではないのです。結局、若干のルール変更はあっても、オリンピックはやっぱりレスリングJUDOでした。
しかも、日本選手が豪快に投げて「決まった!」と思った瞬間、相手が空中でくるりとひっくり返って腹から落ちる……すると「技あり」どころか、効果にもならない。
素人目には「もう一本でしょー」と言いたくなります。そうした点も日本選手対外国選手の不可解な判定となって現れていました。
それで気づいたのです。日本柔道と世界JUDOの違いは美しさのある、なしであり、日本の柔道は美学だったのかと。
かたや外国のJUDOは格闘技なのです。それも時間内にポイントを取り合う格闘技なのだと。それは正にフォールをあきらめ、ポイント合戦に終始するレスリングそのものです。
かつて大相撲でも同じようなことがありました。外国人力士が幕内上位に進出して活躍するようになったころ、「勝てばいいんだろ」といった力任せの押し技が増えたのです。
彼らには「ただ勝つだけではダメ。美しく勝たなければ」といった言葉などわけがわからなかったでしょう。「格闘技なんだろ?」と思ったはずです。
日本人にとって相撲は[SUMOU]ではなく「相撲道」であり、美しく勝つことが求められているのです。それは日本柔道の根底にも流れている美学なんだと思いました(^_^)。
さて、今回JUDO男子は金メダル0に終わりました。美しく勝とうとする日本柔道は世界JUDOに敗れつつあるようです。問題は「それならどうするか」でしょう。
外国人選手のようにひたすら筋肉をきたえ、ポイントを取って後は時間をつぶす世界JUDOを目指すのでしょうか。それでは「柔よく剛を制す」ではなく「剛よく剛を制す」でしょう。
そもそも体重別に分かれて試合が行われる以上、もはや柔と剛の違いはなさそうです。日本柔道は世界JUDOに飲み込まれるしかないのでしょうか。
しかし、世界JUDOの先にあるのはどのようにルールを変えても所詮レスリングだと思います。
レスリングの試合時間はわずか2分(×3セット)です。相手の背中を取ったら1ポイント。場外に押し出したら1ポイント。回転させたら……などポイント狙いばかりで、フォールによる1本勝ちなどほぼ皆無。
そして、ポイントさえ取ったら後は時間つぶし。たらたらと時間が流れ「ポイント1対0で勝ち!」……(-.-)。
正直あのようなレスリングはつまらないと思います。しかし、そのつまらなさを耐えているのは勝つためです。そこにあるのは「勝ち」だけ。勝てば報われるつまらなさと言えます。その結果、レスリング日本女子は金メダルをたくさん獲りました。
私は日本柔道は世界JUDO――レスリング柔道を目指すべきではないと思います。あくまで美しさを目指して「一本」や「技あり」にこだわり、美しい柔道で勝ってほしいのです。それはきっと世界JUDOファンの支持を受けると思います。
観客は大きな技を使って勝つ日本柔道に拍手喝采を送るのです。それができるのは極論すれば(美しく勝つ柔道の伝統を持つ)日本選手だけではないでしょうか。
そして、今後日本選手が目指すべきは「相手有利に組ませても勝つ」柔道だと思います。
オリンピックの試合では、軽いクラスほど組み手争いに終始します。日本選手と外国選手に大きな力の差があるわけではないようで、やはり自分有利に組まないと、勝つのは難しいのでしょう。しかし、その結果組み手争いばかりで組まない、組めないまま時間がどんどん経ち、そのうち指導が入ってポイント負け……といった流れになっているのです。
ならば、相手有利に組ませてそれで勝てばと思います。もちろん素人の言葉であり、無責任な言い方かもしれません。かなり難しいでしょう。
しかし、相手有利であっても組んでいることは間違いありません。そこから技の掛け合いで勝つ。美しく勝つ日本柔道を世界に見せれば良いのではないでしょうか(^_^)。
これまでの柔道で「柔よく剛を制す」の言葉は、体格の劣ったひ弱な柔道家が大男を投げ飛ばす――と言った意味合いで使われました。
しかし、これからの「柔よく剛を制す」は《相手有利の組み手でも勝つ》という意味にすべきではないか。日本柔道を世界JUDOに変えてはいけないと思うのです。
○ これからの柔よく剛を制すとは 相手有利の組み手でも勝つ!
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
後記:一つ二つ補足を。文中「つまらないレスリング」の例としてポイント争いばかりでフォール勝ちがないことを挙げました。ところがオリンピック後、女子レスリングの吉田沙保里選手が9月28日の世界選手権で優勝、前人未踏の世界大会13連覇を成し遂げました。そのとき彼女は4試合を全てフォール勝ちで仕留めたのです。
なるほど勝たねばならないオリンピックと、ある意味負けても構わないと攻めまくる世界選手権は違うんだなと思いつつ、「フォールのないつまらないレスリング」などと書いて「ごめんなさい」と謝ります(^_^;)。吉田選手自身もオリンピックの戦い方に物足りなさを感じていたのかもしれません。ほんとに強いですね。でも、ちらと思ったのは「オリンピックでもフォールで金メダル取ってほしかった」なんですが……。
もう一つは相撲。先日NHKで大相撲ヨーロッパ大陸選手権を見ました。そこでは相撲が体重別で実施されていました。110キロクラスが特に面白かったです。激しいぶつかり合いと力比べは迫力満点でした。彼らの多くはレスリングからSUMOUに転向してきた男たちとか。いわく「スモーは勝ち負けがはっきりしているので面白い」と。正に相撲こそポイント制の入る余地がありません。「ああ大相撲も将来世界スポーツになるかも」と思わせました。でも、万一相撲がオリンピック種目になったら、金銀銅はモンゴル勢が独占するでしょうね(^.^)。(御影祐)
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