「駆け込み退職」について


「駆け込み退職」について (その1)

○ 駆け込みの退職騒ぎ それもまた人情知らぬ政治の決定?



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ゆうさんごちゃまぜHP「狂歌教育人生論」        2013年1月25日(金)第 150号


 寒中お見舞い申し上げます。m(_ _)m
 14日の成人の日、東京では7年ぶりの大雪。北陸、北海道でも豪雪・低温が続いております。
 こちら実家も九州ながら内陸ゆえ最低気温が氷点下7、8度まで下がることがあります。ストーブを焚いていない部屋など外にいるのと同じ寒さです。私は「おーさむ、こさむ。山から小僧が飛んできた」と歌ってその部屋に行っています(^.^)。
 今日からまた今冬一番の寒波襲来とか。お互い寒冬を耐えに耐えて乗り切ろうではありませんか。

 さて、本年初メルマガがここまで遅れてしまいました。
 当初は昨年末訪ねてくれた友人7人との小旅行を、さらりと書いて2013年をスタートさせるつもりでした(^_^)。

 ところが、大阪の高校で体罰自殺事件が発生(発覚)して「どうしよう。それを書こうか」と迷っているうちに日が経ってしまいました。

 その後体罰と自殺との関係、それが体育科という特殊なコースで起こったことなどいろいろ明らかになりました。しかし「入試中止」など事態が流動的で、まだコメントできる状況にない感じです。

 そこで、今号は数日前突如飛び出した「教員の駆け込み退職」について書こうと思います。3月末に定年、もしくは退職予定だった先生方の一部が1月末の退職を、突如申請したというのです。埼玉県ではその数110名。
 私も元教員として最初は「なぜ?」と思いました。が、そこには悲しくなるような事態が起こっていました。
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 (^_^)本日の狂短歌(^_^)

 ○ 駆け込みの退職騒ぎ それもまた人情知らぬ政治の決定?

 (^O^) ゆとりある人のための10分エッセー (^O^)

 【 駆け込み退職について 】

 大阪の体罰自殺事件、アルジェリアのテロと暗い事件が話題となっている昨今、埼玉県の「教員110人駆け込み退職」事件(?)は最初「何それ」と思いました。内容をご存じない方のためにちょっと解説しておきます。

 昨年11月、国家公務員の退職金減額が決まり、「地方公務員も速やかにならうように」とお達しがありました。埼玉県はそれを受け急きょ条例を制定。その実施を4月1日ではなく、2月1日としたそうです。
 なので、たとえば月給40万、勤続35年以上の定年退職者が3月末に退職すると、新規定によって150万の減額となる。
 しかし、1月末に退職すればその減額がないので「駆け込み退職者が110人も出た」というのです。クラス担任も3人含まれていたとか。

 1月末の退職だと2月3月分の給料80万が出ないから、実質的には70万の違い。海外旅行なら数回分ですが、マイホーム借金の返済、子どもの教育費など「それをあてにしていた」側からすると大きな減額です。よって「それを惜しんで駆け込み退職した」かに見えます。

 しかし、私がまず思ったのは「この違いの計算おかしいのでは?」ってこと。

 実施が4月1日なら、2月3月分の給料80万が入って3月末に150万多い退職金をもらえます。つまり、旧制度と新制度を比較すると230万の違いとなるはず。
 逆に言うと、1月末の退職を決めた人は本来もらえていい2月3月分の給料80万を失っています。「1月末の退職によって70万得した」とはとても言えません。むしろ1月末で辞めた人も80万を失う犠牲を払っているのです。

 この報道を受け、世の感想は「気持ちはわかるけど……」であり、保護者や生徒が不安とさみしさをもらす。それはよくわかります。
 そして、2月1日の実施を決めた制度の不備が指摘されるのは当然ながら コメンテーターの中には「教育労働者としてどうだろう」と当人たちの人生観、教育観を問題視する人もいました。
 もちろん3月末まで勤め上げる先生方が多数派でしょう。この流れで言うと、そちらは「教育者として立派な」方々で、駆け込み退職者は「ちと?」の疑問符が付くように思えます。
 しかし、私は「あれは現場の先生たちによる最後の反逆ではないか」と思いました。

 借金財政、予算逼迫(ひっぱく)を錦の御旗として人の気持ちなど全く考えることなく制度を決める政治家たちに、いたちの最後っ屁を食らわしたのではないかと(^.^)。

 と言うのは3月末の退職なら退職金が150万減額される。しかし、2月3月の給料80万は入る。1月末の退職なら(計算上マイナス2ヶ月分があるものの)退職金の減額はない。しかし、2月3月の給料80万が入らない。

 まるで朝三暮四です。3月末に受け取る給料・退職金総額で考えるなら、3月末まで続けた場合マイナス70万、1月末で辞めたらマイナス80万。1月末で辞める方がむしろマイナスが多いのです。

 猿回しに飼われていた猿たちは朝三暮四のからくりがわかりませんでした。しかし、人間様――先生方がこのからくりと言うか、結果に気が付かないはずがありません。1月末に辞めた方がマイナスが多いことに。
 事務担当者とか校長先生は「1月末に辞めるとむしろマイナスが多いですよ」と説明したかもしれません。

 では、なぜ110名の先生方は1月末の駆け込み退職を申し出たのでしょうか。

 私は元教員仲間としてこのように思います。
 三十数年続けた教員生活、定年を前にして一体どの先生が2ヶ月前に辞めたいと考えるでしょう。特に担任をやり、部活や受験指導など大切なこの時期に。やめるとき生徒になんと言うのでしょうか。辞任式には……出るのでしょうか。

 しかし、突如実施された退職金減額はそれらの思い、三十数年間の教育労働者としての誇りを、こなごなに砕き、踏んづけた……のではないか。「そこまでやるか。そこまで人間をばかにするか。公務員を目の敵にするか」――その思いが、彼らを定年2ヶ月前の駆け込み退職に駆り立てたのではないか。ただ単に金を惜しんだだけではないと思うのです。

 あるいは、退職金というものの性格を考えてみると、次のように推理することもできます。

 私は十数年前勧奨退職を受けて教員をやめました。当時は教員が余り始めた頃で、四十代での勧奨退職は金額が規程の2倍になりました。
 その頃私は勤続二十年余り。奥さん、子どもはなく、いよいよ物書きの道に踏み出そうと決意しました。貯金がそこそこあったので、当面無収入で執筆活動に専念しても問題はない。それでも「現在の貯金と退職金で大丈夫だろうか」と不安に感じ、迷っていました。

 そのとき退職決意を後押ししてくれたのが「退職金2倍」の規定でした。これはその前年に作られた勧奨退職の規定です。実際の金額は書きませんが、1万が2万になる2倍ではありません。
 私はそれを知ったとき、「二十数年の仕事ですり減らした自分への対価として、この金額はそれを補って余りある」と思い退職しました。

 この流れで言うなら、三十数年間働き続け、いよいよ退職を迎えることになったとき、退職金が150万減らされることは、「我慢がならない。許せない」と感じたのではないでしょうか。私ならおそらく感じると思います。

 支払う側にしてみれば、一人の退職金は今年の予算から執行する、ただそれだけのものです。
 しかし、働き続けた個人にとって退職金とは三十数年間の労働報酬、労働対価なのです。それを突然減額するって一体なんなのでしょう。

 確かに財政が厳しい折、退職金減額の方向性はわからないでもない。4月以降も働き続ける人にとっては「やむを得ない」と受け入れる(受け入れざるを得ない)としても、3月末退職の人にとっては話が違います。さすがに堪忍袋の緒が切れたのでは、と思います。

 1月末の退職では生徒保護者が不審に思う、他教員にも迷惑がかかる、80万を失うという点では3月末退職と大差ない、むしろマイナスが大きい……と思いながらも、「退職金の減額だけは許せない」と憤慨したのではないでしょうか。

 このように書くと、あるいは「甘いよなあ。やっぱり安定した公務員の考えそうなことだ。一般企業なんか会社が倒産したら、退職金も出ないよ」と言われるかもしれません。

 しかし、敢えて言わせてもらえば、(三十数年働き続けたなら)倒産したからと言って退職金が全く出ないとしたら、それはそちらの方がおかしいのではないか――それが一点。

 もう一点は景気が悪いときは公務員がうらやましがられるけれど、好景気の時は年収が昨年の2倍になることもある(あった?)のが一般企業の方々ではないか。
 それが公務員に反映されても微々たるもので、多くの公務員は国内外の旅行にも行けず、日々の仕事に専念するしかなかったのですから。
 そもそも一般企業労働者と公務員労働者がお互いうらやましがったり、敵対してもなんのいいこともありません。

 公務員は来年度からさらに年間6パーセントの給料が「復興財源」としてカットされます。
 ところが、そうやって集めた正に血税が、たとえば放射能除洗作業では、元請けとして大手の会社がそれを受けて下請けに出す。2次下請けは3次下請けへ出す。さらに下受け、下受けと流れてなんと6次下受け。そこでやっと仕事が始まっているのです。
 元請けから中間受けの連中はマージンと言う名のピンハネをやって自分の手は全く汚さない。かくして除洗は満足に行われず、最もきつい仕事をやる末端の労働者には微々たる金しか払われない……。ピンハネの連中が受け取る金は公務員、多くの国民から搾り取った血税なのです。
 そういう仕組みをほったらかしにしているのは政治であり、黙々と耐えているのは被災者であり、末端の労働者であり、公務員だと思います。

 時代錯誤のような言葉ながら、今こそ団結して「社内留保ばかり増やして利益を労働者に配分しない大企業、金を集めて利得で裕福な暮らしを送る資本家連中、無駄をなくさないまま貧しい人たちから税金を搾り取ろうとする政治家たち」に対抗すべきではないでしょうか(^_^)。
 資本主義が高度に発展しながら、利益配分においては原始資本主義のままで、貧富の格差は広がるばかり。
 こうなったら、労働者たちも原始労働者、組合も原始組合に戻るしかないと思うのですが……(^_^;)。


 ○ 駆け込みの退職騒ぎに思うこと 「立て! 万国の労働者!」(^_^;)


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 最後まで読んでいただきありがとうございました。



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