○ 総選挙 議席で与党支持された? 得票率なら自民惨敗
ゆうさんごちゃまぜHP「狂歌教育人生論」 2021年11月11日(木)第 180号
選挙の後私はいつも「本来の議席数」と題して《比例代表》の得票率に基づく各党議席数を算出しています。
それは日本の党派支持と民意は見かけの議席数ではなく、得票率に表れていると思うからです。今回もやってみて状況は4年前とさほど変わらないことがわかりました。
計算した後、公開するかどうするか迷いました。
と言うのは「何書いたって日本の小選挙区比例代表制は永遠に変わらないだろう」と絶望感を覚えるからです。まー誰も私の論考に注目しませんし(^_^;)。
もっとも、同じように空しい主張として「核兵器廃止! 戦争反対! (政党でも個人でも)独裁やめろ!」と叫ぶのがあります。最近は「温暖化阻止!」も加わりました。
全て空しさを覚える主張です。だからといって黙っていると、「それを許容している」と思われかねません。一人の女子中学生の声が世界を動かすことだってありました。
それに、個人的事情でメルマガ類の配信中止の可能性が浮上してきました。
それを伝えるために「やっぱりいつもどおり『総選挙本来の議席数』を公開することにします(個人的事情は後記に)。
そして、いつもの結論「民意を正確に反映しない小選挙区比例代表制度を廃止せよ!」と叫びたいと思います。
== 目 次 ==
[1] 事前予想不的中?
[2] 各党の獲得議席と本来の議席数
[3] 制度のうまみ・恩恵を最大限に受ける自民党
[4] 選挙に行きたいと思わせない制度
[5] いっそみんなで……
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(^_^)本日の狂短歌(^_^)
○ 総選挙 議席で与党支持された? 得票率なら自民惨敗
[1] 事前予想不的中?
2021年衆議院総選挙(10月31日施行)が終わりました。
政権選択とも言われ、立憲民主と共産党が小選挙区においてかなり選挙協力をしました。
また、与党経済政策への不満、モリカケ・記録改ざん、IR汚職・選挙不正など自民党への批判、何より後手後手だったコロナ対策への不満から「政権交替なるかも」と思わせました。
ところが、フタを開けてみれば、与党は微減にとどまって安定多数の293議席を確保して実質「大勝」の雰囲気。かたや立憲・共産党の共闘は不発。自民と立憲が減らしたすきに維新の会が4倍増を果たすという、正直(?)意外な結末となりました。
マスコミ・テレビ報道各社の「事前予想」は与党に振れ野党に振れ、「出口調査」の直前予測でさえ大きく外れました。
これを見ると、私の競馬予想に似て「マスコミの議席予想は不的中だった」と言えそうです(^_^;)。
評論家目線では予測が的中しなかったのは「浮動層の動向を見誤ったから」などと言われています。
だが、私は予測不的中最大の原因は「小選挙区比例代表」という選挙制度にあると思います。
もしもオール比例代表なら、事前予測(=民意)は議席に正確に反映されたでしょう。
その結果は自民大敗であり、与野党逆転の政権交替です。
衆議院465名を選ぶ「小選挙区比例代表並立制」は小選挙区289(62%)、比例代表176(38%)です。過半数は233。
今回自民党は261の議席を得て単独でも安定多数を確保しました。
「何やかやあっても、結局自民党は支持された」と思っている方が多そうです。
しかし、議席数ではなく比例得票率に基づく本来の議席を調べてみると、正しい民意は与党の過半数割れであったことがわかります。
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公示前 | 党 派 | 議席数 | 得票率 | 本来数 | 増減 |
---|---|---|---|---|---|
305人 | 与 党 | 293 | 47% | 219 | +74 |
155人 | 野 党 | 172 | 53% | 246 | −74 |
このように与党の得票率は47%、野党は53%であり、本来なら与党219、野党246の議席となります。すなわち、与党は233を超えず、政権交替が実現したのです。
[2] 各党の獲得議席と本来の議席数
まずは各党本来の議席数と実際の議席数の違いを眺めてみます。
以下の表は比例代表の得票率から各党「本来の議席」と実際の「獲得議席」、そして「増減」を算出しています。
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【 2021年総選挙、比例代表得票率に基づく正しい議席配分 】
政 党 名 | 議席数 | 得票 率 | 本来数 | 増 減 |
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自由民主党 | 261 | 34.7 | 161 | +100 |
公 明 党 | 32 | 12.4 | 58 | −26 |
立憲民主党 | 96 | 20.0 | 93 | +3 |
日本 維新 | 41 | 14.0 | 65 | −24 |
国民民主党 | 11 | 4.5 | 21 | −10 |
日本共産党 | 10 | 7.3 | 34 | −24 |
れいわ新選 | 3 | 3.9 | 18 | −15 |
社会民主党 | 1 | 1.8 | 8 | − 7 |
無 所 属 | 10 | 2.0 | 10 | --- |
総 計 | 465 | --- |
最初に確認しておきたいことは、衆議院の定数は465(過半数233)です。
ということは本来政党支持率=得票率が10%なら、46.5の議席を獲得するし、得票率1%でも4.6人――つまり4から5の議席を獲得できるはずです。
ところが、「小選挙区制」というのはこれを許しません。
得票率4%のれいわ新選組は議席3ですが、本来なら18人の当選であり15人減らされている。2パーセントの社会民主党でも本来8の議席を取っていいところ、わずか1人です。
あとは7パーセントの共産党が本来なら34人のところ24人減の10議席。5%の国民民主が本来21なのに10人減の11議席。
41人当選で3倍増と浮かれている日本維新の会も、得票率が14パーセントだから本来なら65の議席を得ていたので24人減です。与党側では公明党も本来なら58議席のところ26減の32議席でした。
立憲民主党は20%の得票率で本来93に対しプラス3の96議席でした。
不利も恩恵も受けていないように見えますが、接戦も多かった小選挙区で1位になっていれば、プラス50くらいの可能性がありました。
この場合おそらく自民党が-50(=211)となって「自民大敗、与党辛うじて過半数の243」という結果になったでしょう。
さらに一覧表に出ていないものの、かなり個性的(?)な政党「NHKと裁判してる党(以下略)」でさえ、79万6788人の支持を得て得票率は1.45パーセント。つまり、オール比例代表なら「N党」でさえ6人か7人の議席を得ていたのです。
以前1990年ころオウム真理教が選挙に立候補したことがあります。その後新宗教「幸福の科学」も政党として何回か登場しました。が、いずれも議席を獲得できませんでした。
先ほど書いたように、オール比例代表なら0.5パーセントの得票率によって1名の議席を獲得できます。
もしもオウム真理教が衆議院に1人でも登壇していたら、サリン事件などの「テロはなかったのではないか」と私には思えます。
特異な小集団が――それでも国民の1パーセントの支持があるなら、それを無視すれば(無視されれば)、集団は過激化してテロ活動に走る。それはどの国、どの時代でも共通の特徴です。
得票率を素直に評価する本来の議席が減らされる最大の原因は定数1の小選挙区で議席を取れないからです。また、比例代表でさえ全国一律ではなく11のブロックに細切れされているので、さらに議席減となります。
[3] 制度のうまみ・恩恵を最大限に受ける自民党
このように中小政党が議席減の不利を受けるなら、この逆が常に大幅増となる自民党です。
今回比例得票率35パーセントなら本来の議席は161人。それが小選挙区と比例合わせて261人と100人増の議席を獲得しました。
オール比例代表なら、自民党は過半数233どころか161人という「大惨敗」だったのです。
自民党が獲得した議席261とは465の総数に対して56%です。35%の得票率なのに、プラス20%の議席を得る。
自民党はプラス100増という制度の「うまみと恩恵」を存分に得て絶対安定多数を獲得したのです。
これをスポーツで例えるなら、陸上100メートルで1人だけ10メートル先にスタートラインがある。サッカーなら1チームだけ5点のハンデが与えられている。
結果、100メートル9秒00で1着になって金メダル獲得、サッカーで連戦連勝して「優勝した」と言っているようなものです。
もしもスポーツでこのようなルールが決められたら、一体誰が公平・公正な競技として参加しましょうか(この具体例、一読法読者は読み流してはいけません。結末の伏線ですよ)。
世の中には「悪法も法なり」という悟り済ましたような言葉があります。
日本には古代「おんいの制」という身分制度がありました。貴族の子弟は親の身分が高ければ、どんなぼんくらでも貴族になれる。
また、江戸時代には「士農工商」という身分制度もありました。各層の中も上中下に分かれ、幕末下級武士による反乱が明治維新を生み出したのはご存じのとおり。
現代日本における小選挙区比例代表という選挙制度は民意を正しく反映しない悪法であり、《議会における身分制度である》と思うのは私だけでしょうか。
[4] 選挙に行きたいと思わせない制度
本来なら今回の選挙で政権交替が発生していた。なのに、与党は絶対安定多数を得る。
今回選挙の投票率は55.9パーセントで、総選挙としては戦後2番目の低さとか。大ざっぱに言えば、国民の半数強しか投票せず、4割強は棄権したのです。
行かなかった理由はさまざまなれど、最大の理由は「何やったって変わらない。投票に行く気がしない」でしょうか。
この小さな絶望感は本人の問題だけでなく、小選挙区比例代表という選挙制度にもある、と私は思います。特に小選挙区制をとる限り、国民の意志は議席数に正確に反映されません。
もう一つ選挙をわかりづらくして「投票してもしなくても、どうせ2人とも当選するんだろ?」と思わせるのが「小選挙区落選、比例復活制度」です。
定数1の小選挙区なんだから「2人当選」というのはあり得ないはず。
ところが、いくつもの小選挙区で立候補した二人が2人とも当選しています。
今回立憲・共産党の共闘によって「小選挙区における立候補が自民と立憲の2名だけ」というところがかなりありました。そこで立憲民主が当選して自民落選となったのに、比例で復活する例が頻出しました。
つまり、選挙区に戻ってみると、二人とも当選して議員になった――というへんてこりんな事態となるのです(もちろん逆の自民当選、立憲落選後の比例復活もあり)。
これを再度スポーツで例えるなら、トーナメントの決勝戦で一方が勝ったのに、両者金メダルみたいなもんです。
私はベスト4以上なら3決を廃止して最低銅メダルにすべきと思うけれど、さすがに金銀の決着はつけるべきでしょう。
ならば小選挙区の定数を変え、「小選挙区2名当選」制度にすればよいのです。すると、定数と選挙区人口の関係から「選挙区定数2名から5名」などとなって、つまりはかつて日本であった「中選挙区制」です。
この比例復活制度ですが、選挙区で得票率51対49の当選と落選――どころか、1人多くても当選なんてことが起これば、落選者を支持した人の意志が国政に全く反映されないことになります。
だから、比例復活というのはわからなくもない。だが、このことがまた投票に行く気をなくさせる原因となっていることは明らかです。
自民党はこの見かけ261人当選と言う結果を受けて「別にお友達を優先しても、買収して当選しても、賄賂をもらっても、官僚に理不尽な命令を下し、記録を改ざんしても、国民は許してくれる」と感じていることでしょう。
ただ、比例復活に関しては一つ提案があります。
今回女性議員の比率は前回の10.1%(47人)からさらに下がって9.7%(45人)となりました。
これで世界の女性議員比率順位166位は当分上がりそうにありません。
ならば、小選挙区2名当選をやめ、女性議員を増やす良策があります。
まず小選挙区で負けたら比例復活は一切なし。そして比例代表当選者の半数50%を「女性とする」ことです。
そうすれば、少なくとも比例代表176人の半数68人は女性となり、小選挙区合わせて100名近い女性議員が誕生するのでは、と思います。
[5] いっそみんなで……
そろそろまとめです。
もちろん私の結論は「小選挙区比例代表という悪法を廃止せよ!」。
その前に残念で悲しいことも一つ書かねばなりません。
それはもしもオール比例代表だとしたらどうだろう――というパラレルワールドの世界です。
今回なら野党が政権を獲得する。当然連立政権となる。政策はなかなかまとまらない。
下野した自民・公明は議会において「批判と反対のための反対」攻撃を繰り広げ、法律もなかなか成立しない。おやおや、すでに見たことのある国会風景です。
ヨーロッパのある国ではかつて「30数%の得票率でも第一党にプラス100名の議席を与える」という法律がありました。そうしないと議会の過半数に達せず、政策がなかなか決まらないからです。
つまり、比例代表によって民意が正確に反映されたとしても、議員一人一人と政党が成熟した意識を持てないと、ものごとは決まらず国は乱れる……。
と思うからこそ、悪法とわかっても小選挙区比例代表という制度を変えようとしないのでしょう。
しかし、先ほど書いたように、この選挙制度は与党の固定化であり、固定された権力は腐敗を生み出しやすい。
若者が投票に行かないのも、社会を良くしようと言う前向きの気持ちを持てないのも、身分制度がある時代、国に起こりやすい傾向です。
マスコミも社会の良識派も「投票に行きましょう」と訴えています。
まるで投票に行かない人間は「民主的意識の欠けたダメ人間」みたいな気配です。
しかし、敢えて言うなら、このような悪法制度の下では「投票に行かない方がまっとうな人間的感情の持ち主である」とさえ思えます。
マスコミは「投票に行きましょう」と言う前に、「民意を正確に反映しない選挙制度を改めよ!」と訴えるべきではないでしょうか。
さらに極論ながら、私はこんなことも考えます。
もしも世の大人たちが「この選挙制度は良くない」と思うなら、いっそみんなで棄権しませんか。
選挙に国民全員がそっぽを向く。だれ一人として投票する人がなく、当選者が出ない。
そんなパラレルワールドになれば、さすがに国会議員だって「この選挙制度を変えるしかない」と感じてくれるような気がします(^_^;)。
○ 総選挙 投票したって変わらない ならばみんなで棄権してみる?
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
後記:10月に発行予定だった『一読法を学べ』第48号が遅れています。
理由の一つは48号をもって終わりとすることにしたので、執筆に手間取っていること。もう一つは「メルマガ発行をしばらく休まねばならないかもしれない」個人的事情が発生したためです。
一昨年発症した脊柱管狭窄症による腰痛は痛み止めを飲むことで、なんとか日常生活を送れていました。ところが、先月以降坐骨神経痛がひどくなり、椅子に座ってのパソコン活動がつらくなっています。
目下痛み止めを変更して痛みの軽減をはかっていますが、鎮静しないようだと手術も考えねばならず、そうなると半年ほどメルマガ・ブログ活動を中止しなければなりません。ただ、『一読法を学べ』の完成だけはやり遂げたいと思っています。
このことをメルマガ読者に伝えるため、本号を発行した次第です。
状況がはっきりしたらまたお知らせします。 御影祐 m(_ _)m
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