『久保はてな作品集』16号

 2年最終課題「変身譚―花びらかまきり―」

 (花びらカマキリのビデオを参考に変身譚をつくる)



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ゆうさんごちゃまぜHP「久保はてな作品集」   2026年01月21日(水)第16号

 2年最終課題「変身譚―花びらかまきり―」
 (花びらカマキリのビデオを参考に変身譚をつくる) 99年1月〜3月

 久保はてな「はてなの遠い世界へ――マーヤの変身譚」


 今回は前号「地味ィな青春論」に続いて『Y高文芸部物語』より「ブンゲーブの青春」を抜粋する予定でした。
 が、再読してこれまでメルマガ配信したものとずいぶん重なっていることがわかりました。
 最近の知見や昔の思い出を人に語って「前にも聞いたよ」と言われるのは年寄りあるある。
 えっ、すでにあった?
 とは言え、我がメルマガもそう指摘されたくないところ(^_^;)。

 過去15回のメルマガと『Y高文芸部物語』を読めば、それがすなわち「Y高ブンゲーブの青春」となる。よって、今号は2学年最後(99年1月)に設定した課題――を紹介したいと思います。

 その前に「地味ィな青春論」に続く「ブンゲーブの青春」に関連して『Y高文芸部物語』(PDFファイル)の冒頭に用意したクイズについて書いておきます(これはメルマガ初見……のはず)。

 質問は以下、
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(オ)当時顧問は部員が「同時進行の青春小説を書く」ための舞台を用意した。
 ただ、部員にその思いを伝えなかった(36頁参照)。
 理由は「彼らが〇〇〇〇だから」。〇内の言葉は?
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 〇の中は漢字4文字(ひらがな7文字)が入ります。

 これは読者が『Y高文芸部物語』を読んだとき、抱くであろう疑問をクイズにしています。「顧問の思いを部員に伝えていたのか」と。
 あるいは、当時文芸部員だった10名が本稿を読んだら、「あの頃言ってほしかった」と思うかもしれません。
 確かに私は「同時進行の青春小説を書いてほしい」との意図を彼らに話さなかった。なぜか。

 理由は二つあって一つは彼らが〇〇〇〇=[文芸部員]だから。
 将来詩や小説、短歌・俳句など創作の仕事に就きたいと思っているなら……いやいや、それはあまりに難し過ぎる。だから「趣味」として創作活動をしたい。または、ただ書くことが好き。そう思って文芸部に入部する。

 自分で感じたこと、考えたことを人に伝えたいと思うなら、ある人は絵画や彫刻として、ある人は音楽を通じて……多くの人は愚痴や世間話として(^.^)それを表現する。今はSNS?
 中には文章として小説、詩やエッセー、短歌俳句など「創作」によって表現したいと思う人もいる。

 とにかく自分が心で感じたこと、考えたことを文章と言う形で表現したいなら、何はさておき《自分のことを書くべき》でしょう。
 小説における虚構(フィクション)とは突き詰めれば「他人の出来事・他人の心の中」を書くこと。
 自分の出来事、自分の内心を表現できなくてどうして他人の心を描けようか――と私は思うのです。
 文芸部顧問としては「それくらいわかれよ」と言いたかった(^_^;)。

 もっと言えば、高校のブンゲー部員なんて「ちょっと変人・かなりオタク(?)」と見なされていよう。昔も今も。
 ならば、恥ずかしがらずに自分のことを「堂々と書けば良いではないか」とも思う。
 もっとも、これはかなり変人であり、オタクの青春時代を過ごした顧問にあてはまることであって、当時Y高に集まったブンゲー部員(10名)は意外に常識人であった――そうも言えそうです。

 そして、もう一つの理由。それは《青春も初恋も人から指示され、強要されて行うものではない》。
 身体の底からこんこんと、ふつふつと湧き出るものであり、ただひたすら、がむしゃらに邁進するものだから。

 ここで前号「地味ィな青春」論が再び登場します。卒業後彼らに尋ねたことはないけれど、「振り返ったら文芸部の3年間は一つの青春――青春前期だったのでは?」と聞いてみたい。
 振り返らなければ気づかない、振り返って思い出すとせつなくなる。それが(地味ィな)青春だから。
 そして、あの瞬間は二度とやってこない……と元顧問は思うのです(^_^;)。

 以上です。

 さて、本号は2学年最後の課題「変身譚―花びらかまきり―」(花びらカマキリのビデオを参考に変身譚をつくる)の紹介。99年1月〜2月にかけて執筆、3月に合評を行いました。
 今となっては誰も振り返らない(^.^)「ノストラダムスの大予言」が日本、いや世界を騒がせ、地球滅亡と予言され――て外れた1999年のことです。

 部員は3年になったら実質引退するので、彼らにとってほぼ最後の課題と言っていい。これまでの「鍛錬の成果を見せてほしい」との気持ちで設定した課題……と言いたいけれど、そこは行き当たりばったりの顧問。

 ちょっと前某テレビ局で見た「花びらカマキリ」の特集がランの花のように美しく、生態と羽化も面白く、カマキリが「花の妖精」と呼ばれるなど、「小説の素材に最適」と思って用意しました。ちなみに、今はペットとして購入、飼育できるようで「ハナカマキリ」と呼ばれています。

 見たことがなければ参考までに以下の画像と動画を。
 画像→「ハナカマキリの画像」・ 動画→「ハナカマキリを育ててみよう」(15分、登場は3分後)
 動画は一例。「ハナカマキリ・動画」で検索すれば他の短い画像に出会えます。


 ここでは久保はてな君の作品を紹介します。
 題名は「はてなの遠い世界へ――マーヤの変身譚」。相変わらずの長文となりましたが、理由があります。
 それは久保はてな君といとこ「のん子」や家族との関係を描いた『透明な叫び』(1年夏)。そして、マーヤとの交流を描いた続編『はてなのヒロシマ』(2年夏)。
 これを一部、二部とするなら、「三部作の最終作として書き上げよう」と思いました。同時に「変身譚―花びらかまきり―」の課題にも応えねばならない。
 これはなかなか難しいテーマで、しかも長くなること必至。それでも冬休みを使ってなんとか完成させました。

 物語は全8節。1〜3はこれまでの流れを受けた「はてなの私小説」風作品。
 4から本格的な変身譚が開始されます。そこはSF作品であり、ゲーム系冒険小説であり、謎解きの推理小説風にもなっています。
 よって、課題に応えた部分は第4節以降なので、読者は1〜3を省略か、さーっと読まれて結構です。 [ここは「なにっ?」とつぶやいてほしいところ(^.^)]

 ただ、3節までに多くの伏線をちりばめています。
 これに気付くのは相当難しいと思います。挑戦してみようと思う方はじっくりお読みください。
 [これぞ一読法実践!]

 そこで今号は第1節全文を掲載し、その下に「第1節のどこが伏線か」を明かします。
 計6ヶ所。読解力テストです。さて、いくつ伏線と指摘できるか(^.^)。



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【 久保はてな作品集16 】2年最終課題「変身譚―花びらかまきり―」
 (花びらカマキリのビデオを参考に変身譚をつくる) 99年1月〜3月

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  はてなの遠い世界へ――マーヤの変身譚   久保はてな


 一九九九年一月三十一日が近づいている。あと二ヶ月。もう時間がない……。

   1

 十一月初め、ぼく、久保はてなはやっとマーヤとの二人っきりのデートを果たした。
 九月の文化祭を終え、十月初めにぼくらY高校二学年は北海道四泊五日の修学旅行に出発した。今文芸部員は二年生十一名しかいない。
 だから、ぼくとマーヤ(ぼくらは綾部摩耶さんのことをマーヤと呼んでいる)はもちろん、文芸部全員が修学旅行に参加したことになる。

 ぼくとマーヤは別のクラスだし、班別自主行動が多いので、見かけることがあっても二人だけになることはほぼない。
 ところが、修学旅行中ぼくは全く偶然にマーヤと三度出会った。函館のトラピスチヌ修道院、夜景の函館山、富良野Pホテルの日の出――それはまるで誰かの創作のようだった。
 ぼくがひそかに思っているマーヤと、約束したわけでもないのに、そんなにたまたま会えるだろうか。ぼくはその偶然を何かしら運命的なもののように感じた。

 旅行後文芸部顧問の堺羽根先生は予想通り「修学旅行を描く」課題を出してきた。ぼくはマーヤとの出会いを「北海道、それは美香の後ろ姿」と題してほぼそのまま小説に書いて提出した。
 この合評は十月下旬の中間試験後に行われた。それ以来ぼくとマーヤはまた少し気まずい関係になってしまった。

 ぼくとマーヤの偶然の出会いは当然二人しか知らない。特に三度目の富良野Pホテルのことは彼女でさえ知らないひそかな出会いだった。相手もマーヤではなく架空の「美香」に変えた。だから、マーヤさえ黙っていれば、ぼくの作品は単なるフィクションとして扱われるはず。少なくともぼくはそう思った。

 ところが、部員連中はすぐにそれがぼくとマーヤを描いたものだと見抜いた。そして、当のマーヤも作中の女の子は自分だと明かしてしまったのだ。
 他部員が口にした「ストーカーじゃん」という批判に答えるかのように、マーヤは「いちいの木の陰から跳ねるように出てくる妖精みたいな女って何だヨ、誰だヨ?」とか、「富良野の朝の日の出を一人見るなんて一体どういう女なんだよ」と、やや自虐的に言い放ち、最後に「そうだよ。それはオレだよ!」と叫んだ。

 マーヤは頬を染めていた。ぼくも真っ赤になった。ぼくは作品を合評に出さなければ良かったと後悔した。少なくともマーヤに先に見せ、公表していいか聞くべきだった。しかし、もう「後の祭り」ってやつだ。
 かくしてぼくとマーヤはまた少し気まずい関係になったというわけだ。

 でも、マーヤにしてみれば、合評の場ではああ言う態度を取るしかなかったのだと思う。彼女の内心はあんな風に描かれたことへの嬉しさ(たぶんあると思う)と、恥ずかしさ(そして迷惑?)の入り交じった複雑な気持ちが渦巻いていたのだ。

 ただ、その日のぼくは妙に冷静だった。みんなの批評を聞きながら、なぜかぼくの目は彼女の両手のマニキュアに向いていた。
 マニキュアをしたマーヤは初めて見た。左の爪は黒く塗られ、右の爪はどぎつい茶色だった。コギャルお決まりの原色マニキュアっていうのか。それは美しさのかけらも感じられない爪と手だと思った。
 なぜマーヤはそんなマニキュアをするようになったのか。そう思ってぼくはマーヤに対してちょっと失望を感じていた。

 その後ワープロ室でマーヤと顔を合わせると、どうもマーヤは視線を逸らせるような気がした。逆にぼくはちらちらマーヤが気になって仕方がない。ぼくの彼女への思いは失望のあるなしに関わらず、一層強くなっていた。ぼくはマーヤとの関係をしっくりしたものにしたかった。
 ぼくの小説はマーヤを傷つけたかもしれない。ぼくは何とかして小説のことを謝りたいと思った。それもみんながいる所じゃなく、二人だけで会って謝りたいと。

 マーヤが果たしてぼくの誘いに応じてくれるか。以前の自分だったら、とても口に出せなかった。しかし、堺羽根先生同伴とは言え、夏休みに一泊二日で一緒に広島へ行った一件がある。ぼくはマーヤが誘いを断らないだろうと、何となく感じていた。だが、臆病な自分にとってそれはいつでも一つの賭けだ。断られたら仕方がない。そう思いながらぼくはしばらくチャンスを待った。

 十一月に入ってひんやりする気候が続いた。放課後のワープロ室も冷たい風が吹き込んで肌寒くなった。窓の外の欅や銀杏はそろそろ色づき始めている。Y高近辺もだんだん秋が深まっていた。

 その日ワープロ室にはぼくとマーヤ、それに部長の遠井崇子と男子部員のカム・エー・オン(いずれもペンネーム)がいた。
 修学旅行の合評終了後堺羽根先生はフロッピーを返却していつものように誤字脱字を直しておくよう指示を出した。さらに夏休みに使ったフロッピーを渡して次回課題を発表した。
 次の課題は夏休み中にみんなで製作した連作小説(部員全員でリレーして小説を書いた)を、各自自分の作品として仕上げることだ。締め切りが二週間後に迫っていたので、みんなその打ち込みに追われていた。

 遠井とカムがマイコン部の方へ遠征に出かけたとき、ぼくは今だと思ってマーヤのそばに行った。
「ね、マーヤ。横浜の人形館って知ってる?」
 ぼくは内心どきどきした。マーヤが何て答えるか、冷たい眼差しを向けるんじゃないか。そんな不安が胸をよぎっていた。
 マーヤはゆっくり首を回して上目遣いにぼくを見た。別に温かくも冷たくもない、いつものマーヤの視線だ。ただ、一瞬瞳の奥が青く光ったような気がした。コンタクトのせいだろうか。

「ううん、知らない。何なの、それ?」
「世界中のいろいろな人形が展示されてるそうなんだ。マーヤは前に人形集めるのが趣味って言ってたじゃない。もし行ったことないんだったら、来週の土曜学校休みだから行ってみないかな、と思って」
「そんなこと言ったっけ? 最近は人形集めなんかしてないけど……二人で行くの?」
 ぼくはまたどきりときた。でも、勇気を奮い起こした。
「うん、二人だけで……嫌だったらいいけど」

 マーヤはちょっと考えるそぶりを見せて言った。
「いいよ。来週の土曜は何も予定入っていないから。でも、それってホントは君が人形を見に行きたいんじゃないの?」
 ぼくはどぎまぎした。妙なことを言うと思った。
「いや、うん。それも少しはあるかな。じゃあ待ち合わせ場所なんかは後日また決めよう」

 ぼくはマーヤのそばを離れた。遠井らが戻って来なかったのでほっとした。
 ぼくがマーヤに思いを寄せているってことはこの間の合評でかなり公になってしまった。しかし、誰もぼくらが「両思い」だと思っていない。
 遠井なんかは「はてなの片思いだろ」とはっきり言ってる。今まではぼくもそう思ったし、当分それでいいやとのんびりしていた。

 ところが、最近文芸部の男連中にどうもマーヤへの意識がちらちら見え隠れしてぼくはちょっと焦り気味だった。
 ぼくの穿ちすぎかもしれないけど、男子部員が書く小説の登場人物がマーヤに似ていると感じることがある。一番はっきり感じるのはネーミングだ。

 マーヤは「綾部摩耶」と言う。彼らは登場人物に「矢部あやめ」とか「間宮八重」などとつけている。ローマ字に分解してみると、微妙に似ていてこいつマーヤのことを意識しているんじゃないかと思うほどだ。
 部長の遠井崇子(あ、これはペンネームで実際は男だ)も、最近そんな感じのネーミングをしていた。もっとも本人に聞いたわけじゃないから、ホントのところはわからない。

 ぼくは自分の席に戻るとパソコンの画面に目を走らせた。今度こそ本当にマーヤと二人だけのデートができる、そう思って心は上の空だった。
 きっと仲直りの機会にもなる。いや、今日の感じだとあの作品でマーヤと気まずくなったと思ったのはぼくだけで、マーヤはもしかしたら気にしていないのかもしれない。またぼくの独り相撲だった可能性がある。
 こういうのを「忸怩たる思い」と言うんだろうか。でも、いい。他の男連中より一歩先んじたことは間違いないから。
 その後ワープロ室は部員がぞろぞろ集合してみんなぱちぱちキーボードを打ち始めた。(略)

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 以下6ヶ所の伏線と解説。

 [第1節の伏線]

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1 はてなの遠い世界へ――マーヤの変身譚
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・「それって表題だろ?」とつぶやかれるかも。
 表題にわざわざ「マーヤの変身譚」と入れていることこそ、単なる実話風小説ではないこと、「SF世界に連れて行こうとしているな」と推理できる。つまり、明瞭な伏線。
 はてなの「遠い世界へ」も「何か妙だな」と感じたとすれば、いい勘です。

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2 一九九九年一月三十一日が近づいている。あと二ヶ月。もう時間がない……。
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・冒頭から「へんな前置き」登場(^.^)。表題と合わせて「へんだ」とつぶやかねばならない。
 なぜ「1月31日」か、「もう時間がない……」ってどういうことか。この答えはどこかで出て来る(具体的には1〜3になく4節以下で登場)。前後に答えがない、意味不明な記述はトーゼン伏線

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3 修学旅行中ぼくは全く偶然にマーヤと三度出会った。函館のトラピスチヌ修道院、夜景の函館山、富良野Pホテルの日の出――それはまるで誰かの創作のようだった。
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・別に妙な表現ではなさそうだが、1・2の伏線に気付いていれば「まるで誰かの創作のよう」はやっぱり奇妙な一文。
 はてなとマーヤの偶然が「誰かによって書かれている」とすれば、それは小説と作者の関係であり、さらに現世を生きる人間と(どこか天上にいる?)神との関係か……と発展させることも可能。よって、ここも伏線とわかる。

 そもそも「マーヤの変身譚」とある副題をぼーっと読んでいる人はここが伏線と気づかない(でしょう)。マーヤが「何かに変身する物語(たぶん花びらカマキリ)ではないか」と題名読みをしていれば、「まるで誰かの創作のよう」は「はてな」の単なる感想ではありえない。すなわち伏線。

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4 旅行後文芸部顧問の堺羽根先生は予想通り「修学旅行を描く」課題を出してきた。
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・今までは「S先生」だった顧問の名が「堺羽根」として初めて登場。「さかいばね〜?」とつぶやきたくなるへんてこりんな名字(^.^)。「羽根」の漢字は「カマキリ」の羽根を連想させる。伏線以外ありえへんでしょう(^.^)。

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5 マニキュアをしたマーヤは初めて見た。左の爪は黒く塗られ、右の爪はどぎつい茶色だった。
 コギャルお決まりの原色マニキュアっていうのか。それは美しさのかけらも感じられない爪と手だと思った。
 なぜマーヤはそんなマニキュアをするようになったのか。そう思ってぼくはマーヤに対してちょっと失望を感じていた。
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・いくらコギャルのようなマニキュアとは言え、黒と茶色のマニキュアはへん。「伏線か〜」とつぶやける。

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6 マーヤはゆっくり首を回して上目遣いにぼくを見た。別に温かくも冷たくもない、いつものマーヤの視線だった。ただ、一瞬瞳の奥が青く光ったような気がした。コンタクトのせいだろうか。
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・いくら小説上の表現とは言え、「瞳の奥が青く光る」ことはない。何かがマーヤに起こっていることを暗示しており、「伏線かあ」とつぶやきたいところ。「コンタクトのせいだろうか」と書いてあるが、それは伏線をごまかす高等戦術(^.^)。

 そもそもこれまでも、これ以後も「マーヤがコンタクトをしている」との表現は一切出てこない。作者が書き落としたミス――ではなく、ここは「はてな」の心中が描かれた部分。よって、それが事実がどうかは問題ではないから触れなかった。

 この部分「マーヤはゆっくり首を回して」も「伏線では?」と思った方はしっかり読めているハイレベルな一読法読者。
 カマキリという生き物は普段とてもゆるやかに活動する。獲物を捕まえるときだけ素早くカマを振るう。わざわざ「ゆっくり首を回して」と表現したことは「伏線かも」とつぶやける。

 また、この後マーヤが横浜「人形館」のデートに応じて「でも、それってホントは君が人形を見に行きたいんじゃないの?」と語る部分も「妙だなあ。伏線か?」とつぶやける部分。
 これまでの流れからしてマーヤは「はてなが自分に好意を抱いている」ことに気づいている(はず)。普通こんなとんちんかんなことを聞くとは思えない。直後「ぼくはどぎまぎした。妙なことを言うと思った」も「マーヤがどこかおかしい」ことを暗示している。よって、これも伏線と言える(この回収はもちろん後半で出てきます)。

 もう一カ所。合評内のマーヤの言葉「いちいの木の陰から跳ねるように出てくる妖精みたいな女」を伏線と思われたかもしれません。本稿前置きにも「カマキリが『花の妖精』と呼ばれる」の一文もあります。伏線と見て構わないけれど、作者に伏線のつもりはありません。

 というのはこの合評の様子はほぼ事実を描写しているからです。マーヤが言い放った言葉もほぼそのまま採用(^_^;)。マーヤのモデルとなった女子部員はここを読んで「ぎゃっ」と叫んでいるかもしれません。(今になって)ごめんね、マーヤのモデルさん。m(_ _)m


 以上6〜8カ所が伏線でした。2、3ヶくらい的中したのでは?
 えっ、「全くわからなかった」ですって?
 やれやれいまだ一読法初段に達していませんね(^.^)。

 再度『一読法を学べ――学校では国語の力がつかない』を読んで勉強してください。


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 最後まで読んでいただきありがとうございました。


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