『続狂短歌人生論』12「愛の獲得競争 その4」


○ 母さんは妹だけを愛してる 私をもっとかわいがってよ


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ゆうさんごちゃまぜHP「続狂短歌人生論」   2023年5月24日(水)第12号


 『続狂短歌人生論』12 愛の獲得競争 その4

 幼子における《愛の獲得競争》その4。同胞(きょうだい)の三角関係について姉妹を例として語ります。「姉・妹」を「兄・弟」に置き換えてもらえば、そのまま兄弟の三角関係として理解できると思います。


 5月03日
 愛の獲得競争 その1「親が望む良い子を目指す」
 〇 愛されたい 自分だけが愛されたい そこがスタート 子どものドラマ
 〇 親が思う 良い子になれば愛される 子どもせっせと良い子を目指す

 5月10日
 愛の獲得競争 その2「親が嫌いな子どもを目指す」
 〇 親が嫌う 批判タイプを目指すのは 親の注目 愛を得るため

 5月17日
 愛の獲得競争 その3「同胞の三角関係」
 〇 弟妹が生まれたときの三角は 私と親ともう一人
 〇 親は言う 等しく我が子を愛すると しかし子どもはそう思えない

 5月24日
 愛の獲得競争 その4「姉妹の三角関係を眺める」―――――――――本号
 〇 母さんは妹だけを愛してる 私をもっとかわいがってよ
 〇 妹は姉と一緒の両親から 離れて一人遊びにふける

 5月31日
 愛の獲得競争 その5「愛されない一人っ子」
 〇 一人っ子 愛はたくさん来るけれど 親と祖父母が子の奪い合い

 愛の獲得競争 その6「母思慕の男たち」
 〇 永遠の母を求めて三千里 批判の母に 母の愛なし



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 (^_^)本日の狂短歌(^_^)

 ○ 母さんは妹だけを愛してる 私をもっとかわいがってよ

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 (^_^) ゆとりある人のための20分エッセー (^_^)

 【『続狂短歌人生論』12 愛の獲得競争 その4 姉妹の三角関係を眺める 】

 たとえば、女の子が二人で上の子が三つか四つのとき妹が生まれたとしよう。姉は初めこそ生まれたての赤ん坊を「かわいい」と言ってお姉ちゃんらしく振る舞っている。
 ところがあるとき、母が赤ん坊の世話をしていると、突然母に甘えたりむずがったりする。あるいは、一人でできた着替えをしなくなり、おねしょをもらしたりする。

 このように姉が赤ん坊状態に戻るのは、彼女が今まで独占してきた母の愛が妹の方に移り、奪われたと感じるからである。姉の甘えた仕草は母の愛を妹だけでなく「私にも注いでよ」と暗に求めているのである。

 母は二人を充分均等に愛していると思うかもしれない。だが、姉は決してそう思わない。
 なぜなら現に母は自力では何もできない赤ちゃん(妹)にかかりっきりだからだ。おっぱいやミルクにおむつ、泣き出せば抱きあげ、「かわいい、かわいい」と言ってあやす。子守り歌を優しく歌って寝つかせる。
 姉はそんな二人を(時には指をくわえる気持ちで)じっと見ている。

 母親が何もできない赤ん坊の面倒をみるのは当たり前。そう思っているのは母だけで、姉の方は今まで自分に10全て関わってくれた母が半分も構ってくれないと感じる。つまり、「私より妹の方を多く愛している」と感じているのである。
 こうして出てくるのが「私をもっと愛してよ」という甘える仕草である。

 このようなとき母親がお姉ちゃんに対して「今は忙しい」とか、「あなたはお姉ちゃんなんだから」などと言って突き放してはいけない。「あーらあら甘えたいんだ」と言って抱いてやるべきだ。
 その場に父親がいれば、彼がその役を引き受けねばならない。「私は疲れている。ビールを飲みたい、スマホをいじりたい」などと言ってはいけない。父が抱いてあげれば満足することが多いからだ。

 姉妹二人の相手は同時にできないと、お姉ちゃんに「テレビでも見ていて」とか、親のスマホを貸してゲームをさせたり、ネット動画を見させることがあるかもしれない。すると姉は一人静かにそちらに熱中してくれる。

 だが、これはテレビとかゲーム依存のスタートラインに立ったことを意味する。自分は構ってもらえないと感じたお姉ちゃんの心には小さな穴が開いている。その穴を面白いものが埋めると、そこから抜け出すのが難しくなるからだ。

 やがて「テレビやネット動画ばかり見ていないで(ゲームばかりやってないで)勉強しなさい!」という親子げんかが始まることはまず間違いないだろう。

 母や父がお姉ちゃんを充分構ってくれる――すなわち親の愛が自分にも充分注がれるとわかれば、姉はやがてもとのお姉ちゃんに戻る。
 だが、突き放せば突き放すほど、彼女は「愛されていないかもしれない」という不安を抱えたままである。だから、なかなか自立できない。
 それでも突き放し続けると、姉は次第に甘えなくなり、自分のことがきちんとできるようになったりする。
 母親はそれを見て「やっと甘えなくなった、いい子になった」と思うかもしれない。

 だが、それは真の自立ではない。姉は母から愛されたいという気持ちを放棄しただけだ。
 そのとき姉の心に「自分は愛されていない」と感じるブラックホールが穴を開ける……。


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 〇 妹は姉と一緒の両親から 離れて一人遊びにふける

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 姉妹の年齢差が三、四歳の場合、妹が三つくらいになるとお姉ちゃんの幼稚園や小学校通いが始まる。若い父と母にとって初めての幼稚園、小学校である。両親は姉にかかりっきりになるだろう。

 たとえば、フリルのついた可愛いお洋服。真新しい教科書やノート、筆箱、ランドセル。それらを身につけての記念写真やビデオ撮影。姉は両親の愛をふんだんに感じる
 仮に姉の心に「愛されていない」と感じるブラックホールが穴を開けていたとしても、この潤沢な愛によってふさがれる可能性が高い。

 そのとき今度は妹が「私をもっと愛してよ」という甘える気持ちを表し始める
 突然拗ねて赤ん坊に戻ったり、ランドセルを背負いたがって嫌がる姉とケンカになったりする。かつて妹が赤ん坊のとき、姉がぐずったのと同じように、妹も母や父に甘えようとするのである。

 ところが、このようなとき、逆に妹が壁に寄りかかって一人静かに絵本を読んでいることがある。お人形さんを相手に一人遊びに熱中していることがある。

 実はこの方が危険信号である。妹が甘えたい気持ちを外に出してぐずった方が、まだ父母によくわかる。両親は妹を抱いてやり「お前も愛しているんだよ」と意思表示できるからだ。

 だが、妹が一人で静かにいると両親はおそらく独りぼっちの妹に気づかない。熱心に本を読んでいる妹を見て「自立した、いい子だ」ぐらいにしか思わない。姉の晴れ姿に夢中で妹の存在を忘れてしまう。

 そのとき妹は心の中でさみしさを感じている。自分は独りぼっちで、父母や姉に見捨てられたと思っている。いや、妹自身はその思いに全く気づいていないかもしれない。ただ本が面白いので夢中になっている。そう思っているだけだ。

 こうして妹の心に「自分は愛されていない」というブラックホールが穴を開ける。
 ここに優しいおばあちゃんでもいれば、彼女はこの孫を膝に抱いてくれるだろうに。だが、核家族ではそれもない……。

 このようなとき、妹を一人遊びのまま放ってはいけない。やはり妹を抱いて家族の輪の中に入れてやることだ。
 妹がランドセルを背負いたがっていれば背負わせてあげる。そうすれば妹は父母や姉の愛を感じる。自分は見捨てられていない、愛されているとわかれば妹の心の傷はふさがる。そして、妹もいずれ自立できるようになるだろう。

 だが、妹の独りぼっち状態に両親が気づかないままだと、妹は父母から「愛されていない」との思いこみをいっそう深めることになる。それが度重なると妹のブラックホールはどんどん大きくなる。暗い闇が心の中に広がり、彼女はだんだん笑顔をなくすだろう。

 一般的に姉妹を眺めるなら、妹の方がブラックホールがふさがれないまま、むしろ穴が大きくなる可能性が高い
 なぜなら妹が幼稚園や小学校に入る年齢になったとき、残念ながら両親にとって、二人目の儀式はさほど感動的ではないからだ。お茶だって二番煎じはねえ……(^_^;)。
 妹はそれを敏感に察知する。そして「自分のことなんか、どうでもいいんだ」と感じやすい。

 このようにして姉は小学校から中学校、そして高校と常に初めての体験(その苦労と感激)を親にもたらし、妹は常にその後追いとなる。
 もしも姉が能力が高く優秀で、妹が姉ほどでなければ(もっと言えば、姉が美人で妹がそれほどでもなければ)、妹の心のブラックホールはもっと大きくなるだろう。
 両親は姉ばかり可愛がり、自分をちっとも可愛がってくれない――つまり「自分だけが愛されない」と思いこむ。妹は心の闇を抱えたまま生きていかねばならない。

 姉が父・母と仲良くなればなるほど(良い子になればなるほど)、妹は父・母から離れて(手のかかるいわゆる悪い子になって)ゆく。それは妹が姉と正反対になることによって、父と母の愛がほしいからだ。逆に、妹が手のかかる悪い子になればなるほど、姉はいっそう良い子に育つ。

 さらに、姉妹がもっと大きくなり、何らかの事情で立場が逆転して妹が可愛い良い子になったとき、姉が今度は可愛くない悪い子になる事態も生起する。
 結局、それらのことは全て姉妹による愛の獲得競争の結果であり、それは早くも二、三歳の頃から始まっているのである。

 余談ながら、私には兄が一人いる。上記はかなり私自身の体験(感情)に基づいている。中でも弟として最もいやだったことは兄の「お下がり」を着ることだった。弟・妹の立場の人は大なり小なり体験者ではなかろうか。
 貧しい時代だったし、使える限りは大切にという風潮もあった。近くの家の子の服を譲り合って着ることも多かった。あの頃は年齢の違う子どもとよく遊んだから、お古・お下がりとわかるのである。

 だが、ある時期――小学校入学ころ私は断固いやだと言い張った(^_^;)。
 兄はいつも新しい服を買ってもらう。私はいつも兄のお下がりの古い服だ。そんなのおかしいよと。
 これ子どもらしい理屈で、兄だって親戚のお古を着ることがあったし、私も新しい服を買ってもらうことがあったので、いつもいつもではない。わがままと言うか頑固な子どもでもあった。

 家計としては苦しかったろうに、両親はそれを許してくれた。今思えば父も母も同胞多数の弟妹だったから、私の気持ちがわかったのかもしれない。以後私は二番煎じの悲哀を味わわずに済んだ。
 ちなみに、兄と私の子供服はどうなったか。いとこが何人かいたので、そちらに回されたと後で聞いたことがある。今はネットで「お古」がやり取りされる。私は「SDGs(エスディージーズ)」とは真逆の子どもだったようだ(^.^)。

 閑話休題。
 兄弟・姉妹による愛の獲得競争は、多くは兄か姉が勝ち、弟・妹が負ける。まれに、兄か姉が負けることもある。この負け組は小さい頃は大過なく過ごしても、成長して何か別の問題を起こす可能性がある。親から「自分だけが愛されなかった」感情をずっと持ち続けるからである。
 親が兄(姉)だけでなく、自分も愛しているとわかるまで、弟(妹)の心のブラックホールがふさがれることはないだろう。

 彼(彼女)は父・母からどんどん離れてゆく。それは一見すると「自立」に見える。だが、実は子が親に愛を期待しなくなった現れである。
 親から「自分だけが愛されない」と思いこんだ子は当然親を愛する気持ちを持つことができない。いつかどこかで何かの機会に、親が本当に自分も愛していたとわかるまで、弟(妹)は自分を愛してくれなかった父と母を許さないだろう。

 子どもが三人以上の場合も同じような愛の獲得競争が起きるだろう
 一般的に一番上の長子と一番下の末っ子は父・母の愛を疑わずに育つことが多い。子どもが三人の二番目、さらに四人以上の間の子が「愛されていないのでは」との疑問にとらわれる。親が「長子を特別扱いしている。末っ子に甘い」と感じるのは中間の子ならではの感情である。


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 最後まで読んでいただきありがとうございました。

後記:今節は20年前の拾遺なので「幼稚園」が出てきます。もちろん今だって幼稚園はあるけれど、共稼ぎの増加とともに、子育て施設の主流は「子ども園・保育所」に変わりました。早いと0歳時から保育士に育てられます。下の子が生まれると、二人とも保育所に通わせることが多いようです。
 結果、20年前と現在では親と幼子との間に変化があるように感じます。

 たとえば、5歳児の「チコちゃん」じゃないけれど、近年幼児の成長と自立ぶりが顕著です。使う言葉の量と質、親や大人への配慮・気遣い。自分の5歳前後を振り返れば「そんな言葉は使ったことがない、親を気遣ったことなどない」と驚くほどの事態が起こっています。

 自分の幼稚園から小学校低学年までを振り返ったとき、母の日にプレゼントどころか、感謝の言葉さえ言ったことがありません。近くの家々もそうで、全体的に貧しい時代だったし、「そんなの女の子か金持ちのぼんぼんがやること」と考えていた感じです(^_^;)。
 先生が幼児・児童に「お母さん(や父の日のお父さん)に感謝の言葉を伝えましょう」と言うのを聞くと、どうも言わされた感があってしっくりきません。親のいない子に「父母の絵を描かせる」のもどうかと思うし、虐待の親であっても「いつもありがとう」と言わせるのだろうか、とひねくれた見方をしてしまいます。

 今は本稿で書いた論旨を修正する必要はないと思っています。が、子どもたちに現れた変化については今後考えてみたいと思います。


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