イラク邦人人質事件


○ 私ならわが子をイラクに行かせないが行くなら死出(しで)の

杯を交わす



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ゆうさんごちゃ混ぜHP「狂歌教育人生論」        2004年 4月14日 第11号

 (^_^)今週の狂短歌(^_^)

11 私ならわが子をイラクに行かせないが行くなら死出の杯を交わす

                注:死出(しで)の杯(さかずき)…別れの一杯

 (^O^)ゆとりある人のための9分エッセー(^O^)  

イラク邦人人質事件

 今日本では、イラクで人質となった若者3人のニュースが大きな話題となっている。イラクのためボランティア活動をしようと入国した日本人の若者が、イラク武装グループに誘拐され、日本政府に対して三日以内に自衛隊を撤退しなければ、3人を殺すと要求が出されたのだ。3人の家族がマスコミに登場して「助けてほしい。自衛隊を撤退させてほしい」と叫んでいた。しかし、政府首脳は撤退要求を拒否した。その後3人は解放すると言われながら、4月13日(火)夕方現在、いまだ解放されていない。

 第一報が報道された直後、私の教え子だった一女性からメールが来た。「3人を救うため自衛隊撤退を訴え、防衛庁長官宛てにメールをしよう」というものだった。彼女のメール友達全員に送信したらしい。彼女にとってこの事件はいても立ってもいられないほどのショックであり、それを行動として表したかったのだと思う。その気持ちはよくわかるし、いいことだと思う。しかし、私の反応は少し違う。

 もし私に二十代の子どもがいて、イラクに行ってボランティア活動をしたいと言ったなら、私はまず行かないよう説得するだろう。イラクはどう見ても危険であり、依然として戦争状態であること、あそこへ行かなくとも他の場所でボランティア活動ができるであろうこと。それを訴えて子どもと討論するだろう。だが、それでもなお子どもがイラクへ行きたいと言うなら、私は最終的に許し、そして大げさだが別れの杯を交わして――子どもが危険な目にあって死ぬもやむなしの心構えで送り出すだろう。

 そして、この事態を迎えたとき私は言うと思う。
「覚悟していました。子どもが死んでも仕方ありません。しかし、イラクや世界の人々と日本の政府が、子どものために何か手助けしていただければとてもありがたいです」と。
 私は政府に自衛隊がイラクから撤退してほしいとは言わない。それはテロに屈する、屈しないの問題ではなく、家族内の親と子の問題だと思うからだ。

 ちなみに私は自衛隊がイラクへ「復興支援=ボランティア活動のために出かける」ことは反対である。あれは最初からボタンをかけ違えた戦争であり、その戦争に軍隊がボランティアとして出動しても、理解されないだろうと思うからだ。
 だが、すでに法律で決められ出かけたのなら、自衛隊の初期の目的は達成されるべきだと思う。
 不思議なことだが、テレビ画面に映されたイラクの自衛隊は(銃器こそ持っているものの)日本で災害活動をするときの、頼もしい自衛隊を連想させた。彼らは確かに米英軍の兵士達とは違う雰囲気を持ち、復興支援活動をしようとしている。そして、それはあるいは《新しい》軍隊の派遣を暗示しているのかもしれない。つまり、闘わない軍隊だ(^.^)。

 私はいずれ各国軍隊は国連軍の一部隊として統括されるのではないかと思っている。自国を守るときは攻めてきた他国軍隊と闘うが、他国・他地域へ出動するときは、国連の依頼や許可がなければ進軍できないようになるのである。つまり、世界の多数が支持したときのみ、統合軍が他国・他地域へ派遣される――そのようになるのではないかと予想している。すでにイラクが隣国クェートへ侵入したとき、国連決議により多国籍軍が組織され、アフガニスタンでも同様の出動が起こった。それは一国(または数カ国)の正義の名による侵略行為や、ある地域の内乱を防ぐ方法になるのではないかと思う。

 これからも世界各地で内戦や地域紛争が途絶えることはあるまい。取りあえず荒療治としての軍隊派遣は求められるだろう。そして、戦乱の中で苦しむ人々にとって、赤十字やボランティア活動はありがたいことである。だとしたら、危険地域であればあるほど、ボランティア活動のために軍隊が出動することはいいことなのかもしれない。現地の人にとって助けてくれることは最大の喜びなのだから。

 私はもっともっと政府はイラクのメディアを使って自衛隊出動の目的をアピールすべきだと思う。首相か防衛庁長官がイラクのテレビで自衛隊派遣の目的を大きく訴えてもいいのではないか。

 ただし、今回の自衛隊派遣はそれが目的であっても、最初のボタンを掛け違えているから、その目的通りにはならないような気がする。特にイラク国民にとって、自衛隊は米英軍に協力する侵略軍としか映らないだろう。

 ボタンを掛け違えたら、どこかで正さないとどんどん悲惨な状態になっていく。アメリカとイギリスがイラクに進軍したことは、今となってはどうひいき目に見ても侵略行為となってしまった。他ならぬイラク国民がそうとらえているだろう。だから、彼らはフセインが倒れても反米戦争をやめないのだと思う。すでに数百名の米英軍兵士が死に、イラク国民の死傷者はそれ以上だ。

 アメリカ大統領、イギリス首相がイラク攻撃を踏みとどまり、あるいは開戦後であってもボタンの掛け違いを謝って正す機会は幾度もあった。
 彼らは大量破壊兵器の驚異を取り除くため、ただちにイラクを攻撃すべきだと主張した。だが、国連つまり世界の多数は、イラクにもっと猶予期間を与えようと反論した。そのとき踏みとどまれた。また、スペースシャトルコロンビアが墜落事故を起こし、乗っていた米国とイスラエルの宇宙飛行士が亡くなったとき。さらに、いよいよ開戦が秒読みとなり、全世界的に戦争反対の運動が起こったときもまだ踏みとどまれた。

 しかし、残念ながら米英首脳は聞く耳を持たずイラク攻撃に踏み切った。そして、開戦してみると大量破壊兵器は見つからず、意外なほどあっけなくフセイン政権は倒された。私はこの最後の時が最も撤退にふさわしい時期だったと思う。「大量破壊兵器はなかった。米英軍はただちに撤退し、国連合同軍の指揮下に入りたい」と宣言して米英軍が撤退していれば、その後は変わったのではないだろうか。
 だが、米国大統領にそのような気持ちはない。そんなことをすれば、イラクの石油が自国に入るとは限らないからで、軍隊を出し金を使い兵士の犠牲を出して、なんの見返りもなしではすまされない――とそう考えたことは明らかだろう。

 それはつまり、テロとの戦いが侵略行為に落ちたことをはっきり示したと思う。イラク国民が(フセイン政権がひどかったとしても)米英の攻撃と占領を、侵略とみなして闘っても仕方ないと思う。米英首脳はテロとの闘い、大量破壊兵器壊滅を目的としてイラク戦に踏み切ったとしても、その後は自国の利益だけを考える、古い考え方のまま占領を続けているのではないか。

 米英は6月をもって米英駐留軍からイラク暫定政権に権限を委譲すると言っている。しかし、親米政権が発足すれば、それこそ昔のかいらい政権と同じだから、米英軍が撤退したとしても、その後内戦が勃発(ぼっぱつ)するのは避けられないだろう。そして、このまま反米抵抗戦争が続けば、政権委譲もできず、米英軍がイラク兵士や巻き添えとなる人民をせん滅するまで、戦争は終わらないかもしれない。それこそ泥沼のベトナム戦争の繰り返しとなってしまう。どこかでボタンの掛け違えを訂正しない限り、事態は悪化するような気がする。

 だからこそ、私に子どもがいれば、そんな危険なイラクにボランティア活動には行かせない。他の国でもできる、日本でもボランティア活動を必要とする人はいる。やがてイラクにも平和が来るだろう。それから行っても遅くない、と子どもを説得する。
 だが、それでもなお子どもが「どうしても今行かなければならない」と言い張るなら、わが子が死んでもやむを得ない――そう思って送り出すと思う。


 ○ 私ならわが子をイラクに行かせないが行くなら死出の杯を交わす

 別の狂短歌も一首……。
   一兵士曰く、
○ 戦争に正しいも正しくないもないただただ悲惨な殺し合いだけ


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 最後まで読んでいただきありがとうございました。

後記:日本人だけでなく、他国の人も数十人人質となっているようです。殺し合いの戦争は手段を選ばない典型のようです。みなさん無事に戻ることを祈るばかりです。(御影祐)



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