イラク人質事件その後


○ 自立とは人を頼らぬことだけど全て自力もさみしい自立



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ゆうさんごちゃ混ぜHP「狂歌教育人生論」        2004年 4月21日 第12号

 (^_^)今週の狂短歌(^_^)

12 自立とは人を頼らぬことだけど全て自力もさみしい自立

(^O^)ゆとりある人のための11分エッセー(^O^)  

イラク人質事件その後

 イラクで人質となっていた五人は全員無事解放されました。彼らの解放の様子、家族の喜びようが報道されていました。喜ぶべきことなのに、いまいち無条件で喜べないのは、同じように誘拐され、軍の撤退要求が出されていた、イタリア人4人のうち1人が殺されたし、他に誘拐された外国人数十人がいるからでしょうか。
 それにファルージャでは米軍の攻撃で六百名以上の市民が殺されたそうです。バグダッドの人が日本人誘拐事件についてどう思うか取材されたとき、3人を知るイラク人は「彼らはいい人だから早く解放されてほしい」と言っていました。と同時に「どうしてそんなことを大げさに取材するのだ。こちらは七百名以上の市民がアメリカ軍に殺されたんだぞ」と憤(いきどお)りを表す人もいました。イラク国民にとって、それは正直な反応でしょう。

 ところが、家族の喜びようと比べて他の日本人――特に政府首脳の反応はずいぶん違うようです。
 最初に誘拐された3人が解放直後に、それでもイラクにまた行きたいと発言すると、政府首脳からしかめっ面と自己責任論が急浮上、救出の費用を本人に請求すべきだなんて声さえ出ました。

 しかし、雪山遭難の例がそうであるように、救出にかかった費用が本人に請求されるのはどうやら当然の事例のようです。
 昔サラリーマンフジ三太郎の漫画でこんなのがありました。三太郎君が珍しく絶望して山中をさまよったとき、遭難したとして警察や自衛隊、ヘリコプターが出動、やがて三太郎君は無事発見され救出されて入院した。そこへ捜索費用数百万円の請求書が届けられる。三太郎君目をむき、「今度は本当に自殺する!」と叫んで病院を抜け出そうとする――そんな内容でした。
 私はそれを見たとき、そうかあ自殺するときは捜索されないようにせにゃいかんのやな、と少年心に(漫画を見たのが自死を夢見る十代後半だったので)思いました(^_^;)。

 でも、そんなことは大っぴらに言わなくてもいいのではないでしょうか。スポーツ紙では救出費用数千万とか数億と試算されているようですが、あるテレビ局によると本人への請求は数十万なのではと算出していました。外務省が外国で危機にあった邦人のために活動するのは当然の「仕事である」との言葉もありました。
 「周りに迷惑をかけた、自分で行きたくて行ったんだろう、自分勝手だ」と非難され、某コワモテ知事も「家族は覚悟して送り出せ」などと言っていました。私が前メルマガで述べた意見も、この流れの中にあると受け取られかねず、(私は少し違うと思っているので)もう一度このイラク人質事件について書かなきゃならないと感じた次第です(^.^)。

 最初の三人が誘拐され、自衛隊撤退を要求するビデオが報道されたとき、三人の親たちはすぐにマスコミに登場して、「子どものために自衛隊を撤退させて」と訴えました。
 この家族の態度に反感が持たれたことは間違いないようで、自業自得だとか、中傷、嫌がらせの声が寄せられ始めました。家族の宿泊所にタクシーがいたずら配車され、インターネットの匿名掲示板では「死にさらせ」とか「クソ家族」などの中傷が飛び交っていたとのこと。家族の家に無言電話や中傷のハガキが送られ、家族製作のホームページの掲示板は閉鎖されたとも。その後家族はマスコミにあまり登場しなくなり、登場しても、「迷惑をかけた」などの言葉に終始していました。

 これらの嫌がらせや中傷に対して外国人記者会見で、ドイツの記者がどう思うか質問していました。
 家族の一人は慎重に言葉を選び「批判のご意見は全て受け入れたい」と答えました。
 ドイツの記者は「家族は自分の気持ちを話そうとしなくなった。日本では表現の自由がないのだろうか」とあきれていました。これは韓国で日本への排斥・反対運動が起こったりすると、日本の韓国関連機関やチマチョゴリ姿の児童生徒に対して、いい大人が嫌がらせや中傷・ののしりの言葉を吐く――それととてもよく似ていると私は思いました。

 前号のメルマガ「イラクの人質事件」も、私が家族を批判しているととられるかもしれません。
 しかし、私は「自衛隊を撤退させてほしい」と言わないだけで、「子どもを助けてほしい」と叫びます。死出の杯を交わして子どもが死ぬもやむなしの気持ちで送り出すとしても、子どもが危機に陥ったら、家族として子どものために最大限できることをやろうとするし、それを周囲の人、政府に訴えるでしょう。それは当然の感情であると思います。
 そして外から見ていても、家族のそのような心境を思いやることができるから、家族に励ましの言葉をかけこそすれ、非難や中傷の言葉を吐こうとは決して思いません。

 思うに、家族に対して非難・中傷の言葉を吐く人は強く正しく、正論を吐ける人なのでしょうか。
 もし拉致誘拐され人質となった人たちが自衛隊員であったなら、誰も家族を非難中傷しないでしょう。仕事として出かけ犠牲になることに対しては同情する。しかし、誘拐された連中は自ら進んでボランティア活動に行った。好きで行ったんだ、自業自得じゃないか。それで助けてくれとはなんて自分勝手な――と言っているかのようです。
 私は必ずしもこの意見を否定しません。ある意味で正論だと思うし、私のメルマガもその流れにありました。だが、ちょっと考えてみれば、その先に考えが及ぶと思うのです。

 つまり、ならば我が子の危機に対して家族として何をするのだろうか。何もしないのだろうか。死出の杯を交わして別れたのだから、あとはお前の力でなんとかしろ、私はもう知らん、と突き放すのかということです。
 しばしば我が子が殺人などの重大犯罪を犯したとき、親が「あいつはどうしようもない人間だから、もう勘当した。私には関係ない」と言ったりします。私には我が子に対するそのような発想(育て方)が、子どもを重大犯罪に走らせたのでは、と思えます。

 話はそれますが、人には自力でなかなか解決できず、他人依存症とでも言うべきタイプの人がいます。それに対して自力でなんでもしっかりこなし、他人は一切あてにしない。そんな強いタイプの人もいます。前者は自立できず、後者は自立していると思われています。

 しかし、私は後者のタイプも自立できていないと思います。
 真の自立とは自分でできることは自力でやるけれど、できないことは他者を頼み、助けてくれと言えることだと思うのです。人をあてにせず、全部自分でやる人の自立とはさみしい自立であると。

 私達は無人島で独りぼっちで生きているのではありません。困っているときにはお互い助け合うこと。それができる人こそ真の自立に到達していると思います。ならば、親が我が子の危機を見て(感じとって)、周囲の人に助けてくださいと叫ぶことは、親として当然の感情であると思います。
 それを自業自得だと非難し中傷する人たちは、とてもさみしい自立家ではないか。彼らは自分の家族、友人、なにより我が子が危機に陥っても、見捨てるのでしょうか。
 いや、おそらく彼らの子どもは自分に危機が迫っても、親に助けてくれと言わないのでしょう。
 しばしば起こる子どもや若者の悲惨な事件――加害者であったり、被害者であったりする事件で、「助けてくれ」の声を出さぬまま、自力で解決しようとする例が多かったのではないかと思います。

 そして、さみしい自立家はしばしば前者のタイプ――他人にいつも依存しているかのような人を軽蔑しバカにします。ところが、他者に依存するタイプだって、そんな自分を嫌悪していて、同タイプの他人に頼って叫んでいるような人を見ると「甘えるな」と非難したりする。
 このタイプは本来的には弱い人間だから、人前で堂々と意見を言えない。だから、陰に隠れたときに強い発言ができるようです。匿名で非難・中傷し嫌がらせをする人間には、こっちのタイプが多いのかなと思います。
 この人たちは表向きはとても弱々しく力がない。その分隠れたときには見せかけの強さを発揮するのではないでしょうか。いじめでもよくあります。いじめられる人ほど、もっともっと弱い人や動物をいたぶることが快感になるようです。

 このような形で人を非難中傷し、嫌がらせの言葉を吐く人は、身近の人に助けてと言わないし、助けられた経験がないし、人を助けた経験も持たないさみしい人たちなんだろうなと思います。

 最後に一言。私は前メールで「我が子がイラクに行くことは反対であるが、それでも行きたいと言うなら、許すだろう」と書きました。
 それは本人だけが感じる何かであって、その中に自己満足だとかヒロイズム(英雄主義)の感情があったとしても、イラクの人の奉仕のために行きたいという気持ちは尊重されていいと思うからです。

 政府首脳はこれが流行しては困るといった気持ちで歯止めの言葉を吐いていたようですが、誰が好きこのんで危険な場所に出かけようと思いますか。それでもなおかつ行きたいと思った彼らは、彼らだけが感じた何かがあったからこそイラクへ行ったのでしょう。
 そもそも日本の若者を考えるなら、周囲の迷惑なんぞ全く考えない自分勝手な行動を取る若者と、ボランティア活動のためわざわざイラクへ行く若者。同じ「自分勝手」と言われても、その実質はずいぶん違うと思うのです。

 日本の与党政治家から、彼らを評価する言葉はちっとも聞こえてきませんでした。ところが、アメリカのパウエル国務長官は日本のインタヴューに答えて「イラクのボランティアのために活動した彼らを、日本人は誇りに思っていいのではないか」と言っていました。私もそう思います。
 私は表だったボランティア活動は何もしていないし、イラクに行けと言われても行きたくないし……やはり彼らは勇気あると思います(^o^)。


 ○ 自立とは人を頼らぬことだけど全て自力もさみしい自立

 ○ 匿名で非難と中傷いやがらせ他人依存の弱い人たち?

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 最後まで読んでいただきありがとうございました。

後記:米英首脳が、イラク主権委譲に関して国連主導に方針転換したようです。それでも彼らから謝罪の言葉は出ないのでしょうね。(祐)



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