アテネオリンピック その5


○ 人が見てどう思おうと構わないわが子のために命をかける



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ゆうさんごちゃ混ぜHP「狂歌教育人生論」        2004年 9月22日 第30号

 (^_^)今週の狂短歌(^_^)

30 人が見てどう思おうと構わないわが子のために命をかける

(^O^)ゆとりある人のための5分エッセー(^O^)  

アテネオリンピック その5


 ☆ 父と子のオリンピック

 オリンピック後半戦で、金メダル4個独占もあり得る――と言われた女子レスリング。4人の結果は金が2つに銀と銅が1つずつ。金独占はならなかったものの、4人ともメダルを獲得した(^o^)。

 この4人の中には伊調千春と馨(かおる)選手、姉妹がそろって出場していた。妹の馨選手は金メダルだったが、姉の千春選手は決勝で負け銀に終わった。姉は試合後のインタビューで、一貫して不機嫌だった。決勝戦で守りに走って攻めきれなかったことが悔しかったようだ。妹の馨選手は決勝戦の前、姉から「勇気をもって攻めろ」と激励された。それもあって勝てたという。馨選手は「姉妹二人で獲った金メダルだ」と言っていた。それでも、銀メダルの姉に笑顔はなかった(^_-)。

 ところが、女子レスリングもう一人の銅メダリスト――浜口京子選手は3位決定戦で勝ったとき、喜びを爆発させていた。
 彼女の父親は元プロレスラーのアニマル浜口氏である。この親父がいかつい顔してうるさくしゃしゃり出てくる。気合いを入れるとかで、でっかい声で励まし、娘を応援する。

 私は父の浜口氏が「金だ金だ」と叫んでいたので、娘が銅メダルに終わったとき、どんな顔をするだろうと思った。ところが、浜口氏は意外にも、「良くやった。すばらしい銅メダルだ。娘にありがとうと言いたい」と語っていた。
 京子選手は他の3人に比べて最年長ということもあってか、とても素直に自分の喜びを表現していた。あの親父からあんな素直な――怪力の娘さんが育ったなんて不思議なことだと思った(もっとも怪力は不思議ではないか(^_^;)。


 ☆ 子どもの危機

 その後の裏話紹介で、京子選手銅メダル喜びの訳がわかった。
 彼女は準決勝戦で点数の掲示ミスという不可解な形で負けた。3位決定戦に回ることになったとき、かなり落ち込んだそうだ。金を逃した悔しさから、控え室に戻っても放心状態だったという。
 そのとき京子選手は日本の実家に電話をした(父はアテネにいる)。
 電話に出た母親は「きっと銅メダルを獲るんだよ」と言ったそうだ。それは母親が今まで一度も言ったことのない言葉だという。弟も「銅メダル獲ってね」と激励した。そのとき彼女は目が覚めたような気がした――と終了後語っていた。

 ベスト・フォーに進んだ選手の力量差はほとんどないのではないか。最後の最後で、勝つか負けるかを決するのは精神力と意欲の差だと思う。あるいは、負けることを怖れずに飛び込んでいけるか。
 守らなければ勝てない。だが、守ってばかりでも勝てない。飛び込めば返し技でポイントを失う。そのこわさを克服して闘わねばならない。
 それでも決勝戦で力及ばずして負ける――次は3位決定戦。もう一度気力を奮い立たせねばならない。
 そのとき身近の人は当人にどんな言葉をかけるのだろう。

 京子選手の母親はそのときの彼女にもっともふさわしい言葉をかけたようだ。
 「もういいよ、よくやったよ」と慰めるのでもなく、「ケガしないようがんばって」と言うのでもない。その言葉はとても具体的だ。「きっと銅メダルを獲るんだよ」と言ったのである。
 私は母親の勘だろうなと思う。母はここが娘の危機だと感じ取ったのではないか。
 もし3位決定戦でも負ければ、娘はもっとひどい挫折を味わわねばならない。だから、母は今まで一度も言わなかった言葉を娘に送った。「銅メダルを獲れ!」と。
 その言葉は京子選手を目覚めさせ、その心に大きなエネルギーを注ぎ込んだに違いない。それは母が娘をしっかり見つめていたから出た言葉ではないだろうか。
 彼女は3位決定戦では攻めて攻めて、攻め抜いて勝った(^O^)。


 ☆ 父の態度

 また、父のアニマル浜口はしばしば「娘を守るためには命をかける」と力説していた。親ばかちゃんりんと言われかねないところだが、「子どものために命をかける」と心から思い、それを明言できる親はそれほどいないのではないか。
 ――と言うと「そんなことはない。子持ちの親なら誰でも命をかけて子どものことを考えている。言葉で言わなくても心では思っている」と言われるかも知れない。
 だが、私はそれが子どもにわからねばならないと思う。どこかで子どもが自分の親は自分のために命をかけてくれている――とわからねばならない。それがわかるのは自分が苦しんでいるときに、かけてくれる親の言葉や態度だろう。それもそのときにぴったりあった言葉である。
 それがなければ、親は自分のことなんかどうでもいいんだと思ってしまう。

 アニマル浜口氏の言動には、他からどう言われようと、どう思われようと構わない。子どものためにはなりふり構わずやるという姿勢が見て取れた。出過ぎと思われがちなアニマル浜口氏だが、娘にとっては愛されていると感じられる父だと思う。

 京子選手は今26歳。父は銅メダルを獲った娘を抱きしめ「よくやった」と言った。成人した娘に何かいいことがあったとしても、娘を抱きしめる父親は、日本ではあまりいないような気がする。
 しかし、最近の若い娘が無惨に殺される事件報道を見たりすると、娘がもはや成人したからといって、無関心な父親が多いのではないだろうか。
一人暮らしに限らず、同居していても悲惨な事件に巻き込まれたりしている。そのとき父の影は薄く、事件後ただ嘆き悲しんでいるだけだ。

 娘自身が父の干渉をいやがることはあるだろう。だから、父が娘の好きにさせている点もあると思う。しかし、それがいつの間にか無関心に発展して、娘の危機を気づかないまま凶悪事件を迎えてしまう。
 子どもに対して好きにさせると言っても、放任することと見守ることは違うと思う。見守っていれば子どもの危機に気づくだろうし、そのとき乗り出すことができるはずだ。
 あのアニマル浜口氏だったら、娘が危機に遭遇(そうぐう)したなら、きっと相手が警察だろうがヤクザだろうが、「命をかけて守る」のだろう。

 そして、3位決定戦の前に母が言った「銅メダルを獲れ」の言葉。それは浜口選手にとってこれ以上ない励ましの言葉だった。彼女が銅メダル獲得をこの上なく喜んだのは、見ていて気持ちが良かった。
 そんな二人の父と母に育てられたから、彼女は気立てのいい娘さんになったのかなと思った(^_^)。


 ○ 父は言う子どものために命をかけるどう思われようとしゃしゃり出る


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 最後まで読んでいただきありがとうございました。

後記:暑さ寒さも彼岸まで……のはずですが、21日には各地で真夏日の新記録を作ってしまいました。そろそろやめにしてよと言いたくなります。今号もアテネオリンピック特集。次回で終了です。アテネのパラリンピックもメダルラッシュのようです。もっとテレビで取り上げてほしいものですが。(御影)



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