○ 解法のパターン暗記の中高生 それでは応用お手上げです
ゆうさんごちゃまぜHP「狂歌教育人生論」 2011年 5月 31日(火)第 134号
台形の面積公式 その3「まとめ」です(^_^)。
5月初めに配信する予定でしたが、いろいろもろもろあって延びてしまいました。
4月初めから帰省しており、実家の漏水修復工事、『空海伝』執筆、畑仕事、90歳の母方の伯母が危篤状態となり5月半ばころ逝去、葬儀でいとこを手伝ったりとか……。
もっとも、最大の理由は「うまくまとまらなかった」からで(^_^;)、やっとなんとかまとめに持っていきました。
今回も長いですが、ご一読ください。
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(^_^)本日の狂短歌(^_^)
○ 解法のパターン暗記の中高生 それでは応用お手上げです
さて、みなさんは算数・数学は得意でしょうか。
「まとめ」の前置きとして妙なことを質問します。
私は前号、前々号で、台形の面積公式や三角形・四角形の公式について説明するとき「補助線を引けばいい」と、いとも簡単に書きました。
たとえば、台形の面積公式について「対角線に補助線を一本引く」、また三角形の面積公式について「頂点Aから底辺に垂直に補助線を引く」などと。
ここで、次のような疑問を抱かなかったでしょうか。
・「なぜ台形に対角線の補助線を引いたのか?」
・「なぜ三角形の頂点Aから底辺に垂直に補助線を引いたのか?」
実はこれ、もっとも根本的な質問(疑問)ですね。
応用問題でも「補助線を引いて」解きましたが、
「お前はどうしてそこに補助線を引いたんだ?」と聞いてもいいわけです(^.^)。
もしも、このメルマガ読者の中に現役中高生がいましたら、数学の授業で先生が
「この図形の問題はここに補助線を引いて……」とか「a+b=k と置けば……」などと言って問題を解き始めたら、次のように聞いてみることをおすすめします。
「先生、なぜ補助線を引くのですか」とか
「なぜa+b=k とするのですか」と。
果たして先生は答えることができるでしょうか(^.^)。
私の高校(高専)時代のことですが、ある図形の証明問題が解けずに苦しんでいたとき、数学得意な友人が「ああその問題なら、ここに補助線を引けば解けるよ」と言ってさらさらと解いてしまうのを見ました。
確かに補助線を引けば、いとも簡単な問題でした。
しかし、私にはその補助線を引くという(数学的)発想がどうしても思い浮かばず、友人に「お前はどうしてそこに補助線を引こうと思いついたんだ」と聞きました(^.^)。
すると友人は困ったような顔をして、
「どうしてと言われても……補助線を引けば解けるだろ。それでいいじゃないか。それにたくさん問題を解けば、なんとなく解法が思い浮かぶんだ」と言いました。
そのとき私は(ちょっと大げさですが)そうした発想が思い浮かばない自分に失望し、それが要求される数学に絶望して(^_^;)
「俺には理系は合わない、文系に行こう」と思ったのです。
先ほどの質問「先生、なぜ補助線を引くのですか」とか「なぜa+b=k とするのですか」と聞いたとき、
「そうすれば解けるだろう」とか「簡単に解くためにこうするんだ」と答える先生は数学の基本をわかっていません。
彼はただ「解法を丸暗記している」に過ぎない――と教えてくれたのは元数学教師の友人です。
さらに友人は、
「それが現在小中高の大多数で行われている算数・数学の授業だ」とも言いました。
この「解法を丸暗記する」算数・数学勉強法の最大の欠陥はこれまでさんざん説明したように、解法が思いつかなければ、あるいは解法を忘れてしまったら、お手上げである点です。
台形の面積公式のところで説明したように、
[台形の面積=(上底+下底)×高さ÷2]を暗記することが「解法の丸暗記」であり、忘れてしまったら、それっきりとなる勉強法です。
私は高専を中退して大学を目指したとき、国立系志望だったので、受験科目に数学がありました。予備校で数学を勉強したときのやり方が、正にこの解法丸暗記パターン勉強法でした。各単元の解法を完璧といっていいくらいに暗記したのです(^_^;)。
しかし、他に英語とか理社国などもやらねばなりません。結局、数学で解法を暗記できた単元は一年間で3分の2くらいでした。3分の1はほとんど手つかずでした。
するとどうなるか、今でもよく覚えています。
まるで丁半バクチのような結果となったのです(^.^)。
模擬試験で自分が勉強した単元が出る場合は満点が取れます。最高4題中3題を完璧に解いて100点満点の75点を取ったことがあります。予備校の壁に得点上位者の名前が張り出されますが、自分の名が出てびっくりしました。
しかし、次の模試ではやった単元が全く出ず4点でした(^_^;)。
面接相談の先生があきれて「君の数学は75点ならどこでも通るが、4点だとどこにも受からない」と言われたものです。
そりゃそうでしょう(^.^)。
解法丸暗記勉強法だとこうなります。やっていないところが出たら、お手上げなのです。
これで75点取ったとして、果たして数学の真の力かどうか、大いに疑問です。
このように解法暗記パターンで数学を勉強しているから、日本の子どもたちがOECD(注※)の数学で点を取れないのです。OECDの数学問題は応用がたくさん出ます。
日本の中学・高校生はいろいろな公式や問題パターンを丸暗記してそれを出題問題にあてはめる勉強をしているから、「見たことのない応用問題」が出題されると、お手上げなのです。すると日本の中高生はあきらめる。
ところが、基本をしっかり学び、いかに応用させるかを練習している海外の中高生はあきらめず、見たことのない応用問題に挑戦する。これが最大の違いだ――と教えてくれたのも友人の元数学教員です。
だから、生徒は先生に質問する必要があると思います。
「先生、なぜそこに補助線を引くのですか」とか
「なぜa+b=k とするのですか」と。
そして算数・数学の先生はそれに答えられる勉強をしておく必要があります。
先生用の指導書もそのように作り替える必要があります。
そうでなければ、いつまで経っても日本の中高生は、数学の応用問題が苦手であり続けるでしょう。
たとえば、台形の面積公式について、公式を丸暗記せず《二つの三角形が合体したもの》と理解すること。これが基本であり、それを証明するために対角線に補助線を一本引いた。そのわけを言えるようにすること、それが大切なのです。
「先生、なぜそこに補助線を引くのですか」と聞かれたら、
「それはね。多角形はいつでも三角形に分割することができる。四角形は三角形の集まりだ。だから四角形の面積・証明問題に挑戦するときは、三角形を作るよう補助線を引くんだ」と答えるのです。
もう一度、小学校で習う面積公式を列挙すると、公の公式は以下の通り。
1 正 方 形=タテ×ヨコ
2 長 方 形=タテ×ヨコ
3 三 角 形=底辺×高さ÷2
4 平行四辺形=底辺×高さ
5 台 形=(上底+下底)×高さ÷2
しかし、これでは四角形の基本に三角形があるとわかりません。
だから、以下のように三角形を基準にして面積公式を作り直すべきなのです。
1 三角形=正方形・長方形の半分=底辺×高さ÷2
2 正方形=同じ直角三角形が二つ=底辺×高さ÷2×2
3 長方形=同じ直角三角形が二つ=底辺×高さ÷2×2
4 平行四辺形=同じ三角形が二つ=底辺×高さ÷2×2
5 台 形=大小二つの三角形=底辺×高さ÷2+上辺×高さ÷2
全ての四角形に[底辺×高さ÷2]がある。つまり、四角形の基本に三角形があるとわかります。
だからこそ、応用として四角形以上の面積や証明問題が出されたときは《三角形を基本とする補助線を引こう》となるわけです(^_^)。
最後に《知識詰め込み・解法の丸暗記パターン》勉強法はどうも数学だけでなく、他の国社理英にも蔓延しているようです。先生方は自教科がそうなっていないか自問したり、反省する必要があると思います。
ゆとり授業が学力を落としたとの反省から、各教科の内容が増えました。
しかし、《知識詰め込み・解法丸暗記パターン》授業が続く限り、将来に明るさは見えないような気がします。学ぶ内容を増やすのではなく、《丸暗記ではない学び方》を子どもたちに教えるべきだと思います。
丸暗記した内容は大人になると、きれいさっぱり忘れてしまいます(^.^)。
しかし、《丸暗記ではない学び方》は忘れません。簡単に言えば、辞書の内容はそもそも丸暗記不可能ですが、丸暗記しても必ず忘れます。しかし、辞書の引き方は忘れません。
辞書の引き方さえしっかりやっていれば、世の中に出た後、辞書を引いて自分で勉強することができます。
さらに、職場でも解法暗記パターンに似た仕事修得法がはやっています。それは「マニュアル」方式です。なんでもかんでも仕事のやり方がマニュアル化されています。クレームに対するマニュアルもあるそうです(^.^)。
これを逆に言うと「マニュアルがなければ仕事ができない、生きていけない」にもつながりかねません。そのように言う若い人、三十代、四十代の人を見かけたこともあります。
これも小中高を通じて《知識詰め込み・解法丸暗記パターン》授業ばかりやっている弊害と言えないでしょうか。
最低限の基本をしっかり理解すること。その上で応用問題に挑戦する授業を展開すること。応用問題に挑戦できる力を養うこと。それが必要であり、大切なことだと思います。
先日テレビを見ていたら、ドイツの「森の授業」が紹介されていました。
幼稚園を森の近くに建設して日々森の中に分け入って様々な体験授業を行っているのです。
ああいいなあ、と思いました。
そこで幼稚園の先生が語っていた言葉が印象的です。
「大事なのは学ぶ方法を学ぶこと、学ぶ楽しさを学ぶこと」だと。
それこそ、基本を学び、応用問題に挑戦できる力の育成だと思いました(^_^)。
○ なにゆえに算数数学学ぶのか 挑戦できる力の育成
※注 OECD生徒の学習到達度調査とは、経済協力開発機構 (OECD) による国際的な生徒の学習到達度調査のこと。頭字語からPISAと呼ばれる。日本では国際学習到達度調査とも言われる。(『ウィキペディア』より)
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
後記: 文中に紹介した元数学の先生とは、数年前から一緒にボランティアバンドをやるようになったG氏です。彼といろいろ語り合ううちに、私のエピソードの問題点や意味、そして算数・数学において何が大切かがわかるようになりました。数学における数十年来の疑問がようやく解決されたような気がしたものです。
G氏は目下参考書「算数・数学における基本中の基本」を執筆中です。それは問題を解くとき、一番最初に言われる「ここに補助線を引く」とか「a+b=k とする」意味を解説した参考書です。完成したら、ここに紹介したいと思います。(御影祐)
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