「500年後を想像できるか」


○ 五百年 前を知ってる我らなら 五百年後を想像できる


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ゆうさんごちゃまぜHP「狂歌教育人生論」        2015年 6月19 日(金)第 176号


 今年の夏、戦後七〇年を迎えます。前号「時間の長さ」で書いたように、六十歳の人にとって七〇年とはわずかに1倍強。つまり、生まれる十年前のことですが、十歳の子どもにとっては七倍も昔の出来事です。それは六十歳の人が四二〇年前を振り返るような時間感覚です(^_^)。今から四二〇年前って一五九〇年、秀吉が小田原城を陥落させた年です。

 さて、毎年八月は夏休み休刊としています。今年はわけあって七月から連続でお休みさせていただきます。そこで私も一足早く「戦後七〇年談話」を公表したいと思います……が、私はもっと長く五〇〇年のスパーンについて語ります(^_^;)。
 なお、文中妙な一文が現れます。ざれごとと思って読み流してください。
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 (^_^)本日の狂短歌(^_^)

 ○ 五百年 前を知ってる我らなら 五百年後を想像できる

 (^O^) ゆとりある人のための10分エッセー (^O^)

 【 五百年後を想像できるか 】

 たとえば、タイムマシンが完成したとして、約五百年前の日本に飛び込んだら、どうでしょう。ときは一五〇〇年代半ば。日本は戦国時代の真っ直中です。

 日本は尾張、美濃など小さな国々に分かれ、武士が領地をめぐって血で血を洗う戦いを繰り広げていました。山賊や海賊も多く、農民は田畑を耕し、作物をつくっては税で搾り取られ、山賊の襲撃を受けました。大きな合戦の後、累々と横たわる死骸を片付けたのは農民だったそうです。彼らは踏み荒らされた田畑を見て絶望的な心境になったでしょう。

 さて、ここからはよくあるドラマの筋書きです(^.^)。

 ある国と隣の国が合戦の準備をしています。私はたまたま領主と仲良くなったので、二人に「戦をやめてください」と訴えます。
「私がいた時代、各国は都道府県に分かれて領地争いなどありません。日本が一つになれば、領地争いは無意味になるんです。戦によって家来がたくさん死にます。家族を悲しませ、領民は田畑を荒らされ悲嘆に暮れるだけです」
 領主は言います。
「この領地は俺のものだ。他国が奪いに来たら戦わねばならぬ。それに五百年後のことなど、ないに等しいはるか彼方のことだ」
 私はさらに説得します。
「いえ、五百年後のことではありません。わずか五十年後です。信長、秀吉、家康によって日本は統一されます。五十年後日本全体が一つになって領地をめぐる戦はなくなるのです」
 しかし、敵対する二人の領主は「日本が統一されるなど信じられない」と言います。

 私はまたある農民に出会います。彼は子どもを抱いて「こんなひどい時代では生きる甲斐がない。この子もかわいそうだ。もう死んだ方がいい」と言います。
 私は「五十年後には戦国時代が終わります。あなたの子どもが大きくなるころ、日本は戦のない国になっているんです。どうか生き延びて子どもを育ててください」と話し、近くの人たちにも力説します。
 彼らは何と答えたか。
「バカなことを言うな。そんなはずがない」と言いました。

 さて、次に私が向かうのは一九六〇年代半ばのアメリカです。

 現在から五十年前の一九六〇年代半ば。ある街に降り立った私は白人と黒人の異様な気配を感じ取ります。黒人は差別され、迫害を受け、能力があっても機会は与えられませんでした。大リーグでは有色人種が排除され、黒人のジャッキーロビンソンが初めてメジャーリーガーになったのは一九四七年のことでした。
 六〇年代半ばになっても、レストランやトイレ、子ども達が通う学校も白人専用と黒人用に分かれています。黒人は差別撤廃を求めて公民権運動を展開し、中には暴力的になる集団もありました。運動を指導したマルコムXは一九六五年に暗殺され、非暴力による抵抗を訴えたキング牧師も三年後銃弾に倒れました。

 私は子どもを抱え、暗い目をした一人の黒人に言います。
五十年後アメリカでは黒人の大統領が誕生します」と。
 彼は「そんなことはあり得ない。信じられない」と言います。
 全ての白人も「黒人大統領が誕生するなぞ百パーセントあり得ない」と言うでしょう。

 同じ頃アメリカはベトナムで戦争をしていました。リーダーは「共産主義から自由を守るための戦いだ」と言いました。それは共産主義対資本主義の戦争でした。
 私はアメリカ大統領と仲良くなったので、戦争をやめるよう訴えます。
五十年後多くの共産主義国は崩壊して資本主義対共産主義の対立はなくなります。あなた方が行っているベトナ戦争は現地の人々を苦しめ、アメリカの兵士を苦しめているだけです。やめてください」と。
 しかし、彼は言います。
「五十年後に共産主義がなくなっているだって? そんなことは信じられない」と。

 突然ですが、ここで読者各位を驚かせることを告白します。
 実は私は五十年後からタイムマシンに乗ってやって来た未来人です(^_^)。
 これから私がいる世界を語ろうと思います。

 五十年後、日韓、日ロ、日中の領土問題は解決しています。日本とこの三国は北方四島(クリル列島)、竹島(独島)、尖閣(釣魚島)問題をめぐって一時期戦争間際の深刻な対立に陥りました。
 しかし、東アジア各国がEUのようにゆるやかな共同体となることで、人々は領土をめぐる戦争が無意味であることを悟りました。そして、全ての領土問題は国際裁判所で判断が下されるようになったのです。
 それによって自国領土を主張する係争地は中立地として国連の管轄下になりました。つまり「領土争いをしている島は両国のものであり、両国のものではない」という判断が出されたのです。各国はこの結論を受け入れたので、戦争は起こりませんでした。
 また、世界の多くで戦争、紛争は激減しています。イスラム教をめぐる宗派対立はなくなり、一時期宗教戦争の危機にあったキリスト教とイスラム教も融和を取り戻しています。

 これは今から五百年後の世界ではありません。五十年後の事実です。

 さて、みなさん方はこの未来を信じられるでしょうか。
「何ノー天気なことを言っているのだ。そんなことはあり得ない」と言うなら、あなたは戦国時代の武士や農民、領主と同じです。あるいは、一九六〇年代を生きるアメリカの白人や黒人、大統領と同じです。
 彼らは言いました。
「五十年後に戦国時代が終わっているはずがない」
「五十年後に黒人大統領が誕生するなんて百パーセントあり得ない」
「五十年後に主義の対立がなくなっているなんて信じられない」と。

 しかし、五十年後日本は統一されて戦国時代は終わり、アメリカでは今黒人大統領が誕生しました。依然として差別が残り、主義の対立が宗教・民族・狭い国家主義の争いに変わったことは残念ですが。

 だから、同じことは今から五十年後に起こる、と私は信じられます。
 私たちが想像すればいいのは五百年後ではない。五十年後の世界なのです。


 ○ 五十年 前を知ってる我らなら 五十年後を想像できる


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 最後まで読んでいただきありがとうございました。

後記:戦後七十年の節目に憲法違反の集団的自衛権を認める安保法制が登場するとは不思議な流れです。現在日本が戦争を起こす可能性のある国は中国・韓国(北朝鮮)・ロシアでしょう。超大国の中国・ロシアと戦争をするかもしれない。そうなったときは米国に助けてもらわねばならない。だから、自衛隊を米国のために使おうとして集団的自衛権の安保法制が出てきた(と私は理解しています)。
 これに対する私の結論はこうです。日本がやるべきことは開戦に備えて軍事力を増強することでも、自衛隊を世界各地の紛争・戦争に派遣することではない。むしろ世界が主義・宗教・民族の壁を乗りこえて大きくゆるやかな統一体となること。争いは国際司法裁判所で解決されるよう世界に発信することだと。
 日本国内の小さな領土争いは日本が一つになることでなくなりました。欧州はEUになることで、もう国同士の戦争は起こらないでしょう。いずれ、ロシアともそのような関係になる。日本も周辺三国とゆるやかな共同体をつくるようになれば、もう戦争の準備をする必要はありません。いま十歳の子どもたちが六十歳になるころ、それは実現していると私は思います(^_^)。(御影祐)


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