カンボジア・アンコールワット遠景

 一読法を学べ 第 14号

実践編T 4「誤答率四割の原因を探る」




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『 御影祐の小論 、一読法を学べ――学校では国語の力がつかない 』 第 14号

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           原則週1 配信 2019年 7月12日(金)



 今号は例題一、二の誤答率四割の原因を探ります。
 小見出しは以下の通りです。もちろん「題名読み」を実践して「おやっ?」とか「何っ?」とつぶやき、しばし黙考後一言一句注意して読んでください。

  誤答率四割の原因を探る[小見出し]

 (1)誤答率四割の原因について
 (2)一読法でも誤答率四割


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 実践編 目 次
 前置き(その一)
 前置き(その二)
 1 社会(日本史)
 2 社会(文化史)
 3 現在の学校で一読法を実践するには
 (1)一読法授業で「予習をしない」わけ
 (2)現在の学校でひそかに一読法を実践するには?
 4 誤答率四割の原因を探る―――――――――本 号
 (1)誤答率四割の原因について
 (2)一読法でも誤答率四割
 5 挫折に終わった一読法授業
 6 実践編の「まとめ」


 本号の難読漢字
・云々(うんぬん)・雅(みやび)な・慕(した)う・画一(かくいつ)的
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************************ 小論「一読法を学べ」*********************************

 『 一読法を学べ――学校では国語の力がつかない 』実践編

 4 誤答率四割の原因を探る

( 1 )誤答率四割の原因について

 さて、「読解認知特性診断テスト」中の例題一、二において中高生の三割から四割はなぜ誤答したか。以下私の分析を書きたいと思います。

 診断テストでは誤答の原因として「生徒は文構造が理解できていないのではないか」とありました。
 確かに例題一では能動形と受け身について、例題二では「仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は〜におもに広がっている」とあれば、「東アジアに」と「オセアニアに」の後に文末の「広がっている」が省略されていることに気付かねばなりません。「文構造わかっているかな?」と思えます。

 他の例を見ても、単純な文構造を問う問題に誤答が多く、原因はそこに集約されるかもしれません。しかし、これまで書いたように、私は文構造の理解云々以前に、一度読んだだけで問題を解く、通読の弊害が噴出したことが最大の原因だろうと考えています。つまり、精読がない。三読法は二度読み段階で精読する。一読法なら最初から精読する。どちらにせよ精読は必須。それがなければ理解度三〇に過ぎず、誤読・誤答も当然かなと思います。

 まず文構造について考えてみます。
 実は日本語ほど文構造がいいかげんな言語はありません。世界でもトップクラスの《いいかげんさ》でしょう。
 たとえば、我々は「私はあなたを愛する」も「君のこと、ぼくは好きだ」も「愛しています、あなたを」も全て同じ意味だと理解できるし、喋って相手に通じます。主語も目的語もない「愛してる」だけでも通じます。

 ところが、英語をはじめとする多くの外国語は文の最初に「私」、次に「愛する」、最後に「あなた」――すなわち英語なら「アイ ラヴ ユー」一つでなければ、「意味が通じない」と言います。これを「ユー ラヴ アイ」と言ったら、正反対の意味になるどころか、文法的に間違っているので「意味不明」であり、「通じない」と言うのです。
 もしも日本の小説でよく見かけるA夫がB子に、一言「愛してる」とささやく場面があったとして、これを英語翻訳して「ラヴ」一語とすれば0点です。必ず「アイ・ラヴ・ユー」としなければなりません。

 余計な見解ながら、私はゆえに英米文学を少々味気ないと感じます。
 たとえば、日本文学には古風で雅な和服女性が「お慕いしております」とか、真逆のキャピキャピギャルが「あんたのこと好いとおよ」と様々な表現があります。しかも、主語はないことが多い。
 ところが、英語は男が言っても「アイ ラヴ ユー」、女性が言っても「アイ ラヴ ユー」。若者が言っても、お年寄りが言っても「アイ ラヴ ユー」。ギャルの言葉なら「アイライクユー」と翻訳するか「アイラヴユー」とするか。いずれにせよ、どちらもギャルの気持ちを正確に伝えているようには思えません。「あんたのこと好いとおよ」は英語翻訳不可能ではないか、とさえ感じます。家族や恋愛模様が描かれた小説における最も感動的な場面なのに、なんというボキャブラリーのなさでしょう。
 外国語表現はどうも画一的で味気ない、と感じるのは私だけでしょうか。日本語は文構造はいいかげんだけれど、日本文学の表現の多様さ、細かさ、豊かさなら世界のトップだと思います。

 ちと脱線しました。何にせよ、日本語にはきっちりした文構造がない。しかし、英語や外国語はものすごく固定的である。これが外国語学習において日本人が最初にぶつかる壁ではないでしょうか。我々は「アイ…… ユー……ラヴ」とささやいてもいいではないかと思ってしまいます。

 このように我々が文構造というものを意識するのは初めて英語を学んだときです。よって「文構造が理解できていない」生徒への対策として小学校の段階から、日本語の【文構造】についていろいろ教えたとしても、大きな意義を見出すことはできません。
 ここで《文構造》につけた【 】は皮肉です。外国語ならきっちりした文構造を持っている。だから、小学校から文構造を教えるのは理解できる。いや、むしろ幼児から、小学校からそれを教えねばならない。だが、日本語にはそれがない。だから、親御さんが幼児に日本語教育をすることはない。小学校に入学してすでに日本語を話せる子どもたちに「人と話すときは主語から始めなさい」と教えるなんてありえません。

 そもそもいくら文構造の理解度が低いと言っても、英語を学んだ中高生なら、
 ・幕府が大名に命じた。
 ・大名は幕府から命じられた。
 この二つの文が同じ意味であること。もしも後者が「幕府は大名から命じられた」となっていれば、正反対の意味でありおかしい。生徒がこれを理解できないとは到底考えづらいところです。
 よって、例題が何を問うているか把握したのに間違えたなら、誤答の原因はそこではない。やはり問題文の読み方にあると思います。

 再度例題一、二を掲載します。さあっと一度読んでみてください。そして、この設問を読んだときの感想をつぶやいてください。例文の「 」は外しました。
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 例題一 次の文を読んで、後の問いに答えなさい。

 幕府は、一六三九年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
 問 上記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。
 一六三九年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。
  @ 同じである A 異なる

 例題二 次の文を読んで、後の問いに答えなさい。
 仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。
 問 オセアニアに広がっている宗教は何か、答えなさい。 [     ]
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 ここでは一行を敢えてくっつつけてみました。眺めてごちゃごちゃしていると感じたのではないでしょうか。私が生徒なら、この二例に対してつぶやく言葉は「めんどくせえなあ」です。
 例一は離れたところにある二つの文を、要素に分けて同じかどうか検討しなければならない。めんどくせえなあ……。それでも解かねばならないのでやる。ではどうやって解いたか。

 例一の場合は「一六三九年同じ、ポルトガル人同じ、追放同じ、大名同じ、沿岸の警備同じ、幕府同じ。全部同じ。答えは@だ!」

 例二はカタカナがたくさん並んでいて、まず「オセアニア」がどこにあるか発見しなければならない。めんどくせえ……。
 それでも、オセアニアを見つけ出してそこに傍線を引く(テストだからそれくらいはやる)。そして、文の最初を読むと「仏教は」とある。答えは「仏教だ!」とすぐに(安易に)答えを書いて次の設問に移る……。

 つまり、誤答の原因は生徒が「例文をさあっと読んで、ちょっと考えただけで直感的に答えを選んだ」からではないか。三読法の「通読段階で答えて精読がない」からだと思います。
 もちろん試験問題だから、例文を一度しか読まないってことはないでしょう。しかし、その読み方では二度読もうが、三度読もうが同じこと。通読だけで精読がないと「文章の理解度は三〇しかない」とこれまでさんざん指摘してきました。
 私には読解力認知テストの結果が誤答率三〜四割となった原因は「三読法の通読のみによる読み方をしたから」と思えてなりません。


( 2 )一読法でも誤答率四割

 この小見出しは「何っ?」とつぶやくに充分な衝撃度でしょう。
 今しも四割の誤答は三読法通読のみで答えたことが原因だと書きました。では一読法ならどうか。「誤答率0」と言いたいところですが、やはり誤答率――いや、無答率四割が出る可能性があります。
 なぜなら、テストと名のつくものは全て時間制限があるからです。

 テスト受験者は時間内に多くの問題を解かねばなりません。例題を瞬間的に判断しなければ、全問こなせない可能性があります。瞬間は大げさながら、短時間であっても精読できれば、正解に至る。しかし、通読のみで答えた生徒は理解度が低いから、当然のように誤答が多くなる――私はそう分析しました。
 では一読法はどうか。最初から精読する一読法の理解度はかなり高い。しかし、それゆえ時間不足となる可能性も高いと思います。

 大げさな話ですが、ここには(特に入試における)時間との闘いが要求される弊害もありそうです。
 三読法は[通読→精読]です。二つの例はしっかり精読すれば、正答率は上がるでしょう。しかし、精読する時間がなければ(生徒がないと感じれば)、通読のみで答える。だから誤答が増えるのです。

 では一読法をしっかり学んだ生徒がこの例題を解くとどうなるか
 例題を直ちに精読するから、正答に達する確率は上がると思います。しかし、いちいちつぶやいていれば、時間が掛かることは間違いありません。果たして全問解くことができるかどうか

 たとえば、このような例題の設問が百ヶあるとして、三読法の通読段階で解けば、一〇〇ヶ全て答えられる。しかし、誤答が増えて六〇ヶしか正答できない。
 逆に一読法なら六〇ヶ解けて全て正解する(その可能性が高い)。けれども四〇ヶは時間が足りず手つかずで終わる……ような気がします。
 結果はともに六〇点です。かたや[×]が四〇ヶ。かたや空欄が四〇ヶ。これは大いに起こりえる事態です。

 読者各位はこの事実をどう思われるでしょう。「なんだ。それなら一読法も三読法も同じではないか」とおっしゃるでしょうか。

 私は本稿において「一読法を学び、文章をじっくりゆっくり読みましょう」と書いてきました。だが、世の中は学校も社会もそれを許してくれません。定期試験や入試、就職・資格試験等々「素早く読んで問題をたくさん解け」といったタイプの問題ばかりです。二度読んでいる時間などないので、一度目から精読する必要がある。だから「一読法を学びましょう」と主張しました。しかし、二度目に精読する三読法が時間がかかるなら、一読法だってちゃんとやれば、時間がかかります

 スピード、スピード、スピード。なんでもかんでも「早くやりなさい」と言われる。
 記憶力のいい生徒、頭の回転の速い子が優秀。逆にじっくりゆっくり読んで正解に達しても、試験問題の半分も解けないようでは「ダメな子、能力のない人間」と認定される。
 私は思います。そんな学校なら行かない方がいい。そんな世の中なら家に閉じこもった方がいいと。


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 最後まで読んでいただきありがとうございました。
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「一読法を学べ」  第 15 へ (7月19日発行)

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