【その6】 狂短歌
「西安宵の明星旅」連載6回目です(^_^)。
(^_^)本日の狂短歌(^_^)
○ 西安の街路をひとり歩き出す 孤立無援の緊張感
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7月9日朝食後の午前八時、ホテルの玄関で私はツアー同行者が乗り込んだバスを見送った。
M氏が手を振る。彼らは今日西安市街を離れ、西部地区の古墳や陵墓を見学する。私は空海の心情を追体験したいと思って、単独で西安市内を歩き回る予定だ。
いよいよ一人になったと思うとさすがに心細くなる。
何も起こらないでくれと祈るような気持ちで一歩を踏み出した(^.^)。
とりあえず北へ向かう。昨日の夕方M氏と同じ通りを歩いて南大門前まで行った。そこまでは一本道だから迷うことはない。
当初は東南の方角にある小雁塔や、昨日訪れた大雁塔の辺りを散策するつもりだった。
しかし、昨夜地図を調べてみると、イスラム教の寺院である「清真大寺」が中心街にあることに気づいた。
その近くには鼓楼(ころう)や鐘楼(しょうろう)もある。城壁にも登ってみたい。
そこで、まず城壁の内側へ向かうことにしたのである。
西安は基本的に京都のように碁盤目状のつくりだから、道に迷うことはあるまいと思った。それでも、念のためホテルで詳細な観光マップを買った。
バス停では人々がバスを待っている。やって来るバスはほぼ満員。プープーとクラクションが鳴らされる。一部の人は車の間を縫うようにして平気で道路を横断する。信号が赤でもお構いなしだ。 ☆ 南大門近景
今日は月曜日だが、車の数は昨日とさほど変わらない。片側二車線の道路をひっきりなしに行き交っている。
中国の朝で有名なものは自転車だが、ここではそれほど走っていない。
歩道を歩く人はさすがに多い。通勤だろう、みなこざっぱりした服装をしている。顔は日本人と区別が付かない。
しかし、二人連れが交わしている言葉はまぎれもなく中国語だ。
私は歩きながらなんとなく緊張している自分を感じた。空海も長安に着いてすぐ城内を歩き回ったに違いない。
その気持ちを少しでも感じ取れたらと思うが、心は落ち着かず、とても旅情を味わうような気分にはなれなかった。
警察に呼び止められたらどうしようとか、通行人とトラブルにならないようにしなきゃ、などと思った(^_^;)。
十五分ほど歩いて南大門の見える交差点までやって来た。ここまでは昨日の夕方M氏と歩いたので、見覚えがある。やっと少し落ち着いてきた。
まず南大門の上に登ってみたいと思った。しかし、案内標識がなく、ここには登り口がなさそうだ(これは後で私の勘違いだとわかった)。城壁の上を人の頭が動いている。たぶん人力車に乗っているのだろう。
仕方なく城壁のトンネルをくぐってさらに北へ向かった。つまり、城壁内に入ったことになる。
トンネルは城壁の幅と同じだから長さが十メートルもある。もちろん車も通れる。
城壁内は外の通りと違って小汚い店が少なく、近代的な建物が建ち並ぶ。歩道も舗装されてきれいだ。
☆ 南大門より北(鐘楼)を望む
さらに十分ほど歩くと鐘楼のある交差点にやって来た。
鐘楼は円形交差点のど真ん中にある。コンクリか石造りの基壇があり、その上に三層の楼が建っている。
全体の高さは五階建てビルくらいか。見上げるとカメラを持った人が一人二階にいる。
だが、どこから登るのか、ここも案内標識がないので全くわからない(-.-)。
☆ 鐘楼(しょうろう)外観
私は交差点にいた警察官らしき男性(交通警察だろうか)に、身振り手振りで「あれに登りたいんだが」と伝えた。
彼もまた中国語で何か言いつつ、身振り手振りで「地下をくぐって向こう側へ行け」と教えてくれた(^.^)。
私は「シェーシェー」と言って頭を下げた。彼はにこりと微笑んだ。
近くに《地下通道》と書かれた入口がある。階段が地下に向かっているので地下道だろう。交差点の向こう側に行けそうだ。
☆ 鐘楼下の地下通道
地下道は意外ときれいで東京都心の地下道と変わらない。ただ、まるで迷路のようにいろいろな方向に分かれている。一度東側へ出て方向を確認してから、また地下へもぐって北側へ出た。
そして振り返って鐘楼を見上げたとき「あれっ」と思った。ここにも鐘楼に至る道がないのである。
不思議なことに、鐘楼は交差点の中で完全に孤立している。まるで車の海に浮かぶ小島だ(^_^;)。
交差点には信号があり、車は鐘楼の周囲を回転するように行き来する。
いくら自分勝手に横断していいとは言え、車は途切れることがない。とても道を渡って行けるとは思えなかった。しかし、鐘楼上には観光客らしき人が確かに見える。
☆ 鐘楼より北を望む
これは参ったと思った。通行人に道を尋ねたいけれど、中国語はちんぷんかんぷん。
私は途方に暮れて立ちつくした(-.-)。
ちょうどそのとき欧米らしき数人の外人さんが十メートルほど離れたところで立ち止まった。カメラを持って鐘楼を撮影している。これは間違いなく観光客で、鐘楼に行くだろうと思った。
そこで彼らが歩き出すと私は後をつけた(^.^)。北側の階段から地下道へ降りる。あるいは、地下道の中に鐘楼への入り口があるのか。
☆ 鐘楼より南(南大門)を望む
すると予感通り、地下道を先ほどとは違う方向に歩いていくと、鐘楼へと向かう入り口が見つかった。
ところが、くだんの外人さんたちはそこを通り過ぎていったからおかしい。
彼らは鐘楼見学者ではなかったようだ。(続)
○ 西安の街路をひとり歩き出す 孤立無援の緊張感
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