【第5回】 狂短歌
☆ お気楽な車遍路の旅なれど神秘を味わう人との再会
四国東岸の車遍路 [画像11枚]
7月14日(水)、この日私は日和佐(ひわさ)にある23番札所「薬王寺(やくおうじ)」に寄るだけで、室戸岬まで直行するつもりだった。
ところが、またもナビは22番札所「平等寺(びょうどうじ)」近くを通って日和佐へ行く道を選択した。
そこで、まあいいやと平等寺へ立ち寄った。参拝客は少なく、特に感想はない。ただ、階段の途中に一円玉がかなり置かれていた。これは薬王寺の厄除け階段の話のはずだが、と不思議な気がした。
☆ 平等寺山門
☆ 平等寺本堂
そして、日和佐へ向かう。これは片道一車線だが、広くて軽快にとばせた。途中歩き遍路を一人、また一人と見かけた。三人目のお遍路さんはとうとう道ばたに座り込んでいた。そこから日和佐まで、まだ10キロはあろう。しかも(走ってみてわかったが)距離だけでなく、この道はくねくね道の登りが続き、その後は長い長い下り坂となる。歩きはしんどいだろうなと思った。そして、ふと車のナビのルートとは言え、弘法大師空海はこの道を使って日和佐まで行ったのではないだろうかと想像した。問題は日和佐を越え、その先の室戸岬までどのようにして行ったか、である。
午前11時頃日和佐(ひわさ)の薬王寺に着いた。かんかん照りの暑さである。女坂、男坂、二つの厄除け階段を登った。石段には確かに一円玉が置かれていた。
☆ 薬王寺山門
☆ 薬王寺大師像
☆ 薬王寺本堂
☆ 薬王寺厄坂
その後私は番外札所の「鯖大師(さばだいし)本坊」へ寄ろうと思った。鯖大師は空海伝説の一つとして有名である。
日和佐から鯖大師まで、内陸の55号線を行くか、海岸沿いの南阿波サンラインを行くか。私は阿南海岸の様子を見たいと思ったので、サンラインを走ることにした。
この道は断崖の山腹に造られた軽快なドライブウェイである。
鋭い角度の山々や海岸線を眺めながら、空海がこの山中を室戸まで歩いて行ったとはとても思えないと思った。海岸沿いもかなり入り組んでいる。
その途中田崎海洋生物研究所がある所で、私は海岸近くまで降りてみた。いい眺めだった。
☆ 阿南海岸(海洋生物研究所付近)
☆ 阿南海岸(展望台より)
サンラインには4つの展望台がある。私は全て立ち寄ってデジカメ撮影した。人は皆無で車だけが1、2台止まっていた。私は南阿波の険しい海岸線を眺めながら、空海は日和佐から船で室戸岬まで行ったに違いないと確信した。
その後サンライン終点から55号線へ戻り、鯖大師(さばだいし)本坊へ寄った。ここでも参拝者が一人もいなかった。
☆ 鯖大師本坊(番外札所)
☆ 鯖大師本坊、大師像
☆ 鯖大師参拝者二人
その後「失礼ですが、昨日午後2時頃鶴林寺にいませんでしたか」と聞いてみた。
二人は戸惑いがちに「ええ……」と答えた。それから少し言葉を交わす。
彼女らは一昨日1番札所霊山(りょうざん)寺から回り始め、26番金剛頂(こんごうちょう)寺まで行って、今日帰るという。
私は面白い偶然だと思った。歩き遍路や自転車遍路体験を記したホームページを見ると、しばしば顔見知りと出会うとあった。私は真面目な札所巡りではないが、その偶然が私にも起こったと思った。
私は二人がこれから室戸へ行くのだろうと思った。そうであれば、またどこかで会えるかも知れない。そこで「室戸へ行ったら、空海が修行したみくろど洞窟を見学するといいですよ」と言った。
すると二人はすでに行ったという。それで私の勘違いが判明した。
彼女らはすでに室戸まで行き、その帰り道に鯖大師に立ち寄ったようだ。これから室戸へ向かう私と出会うことはなくなったが、私はもっと際どい偶然だったんだと思った。
この偶然はせいぜい五分ほどの時間の中にある。もし私がどこかでもっとのんびりしたり、早く移動していれば、彼女らと会えなかったのである。だから偶然は面白いのである(^o^)。
その後は室戸まで約五十キロ。海岸沿いの道をひたすら南下した。途中おやと思う美しい景色もあった。特に「鹿岡鼻(ししおかはな)」の夫婦(めおと)岩辺りはいい雰囲気だった。私は帰りに立ち寄ろうと思った。(続)
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