双子洞窟の中間より見る太平洋

  四国明星の旅



明星の旅7 「みくろど窟」


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【第7回】   狂短歌


☆ みくろどの双子洞窟これもまた聖地を示す磐座(いわくら)の穴



 明星の旅7 「室戸岬みくろど窟(くつ)」


 室戸岬みくろど窟 [画像7枚]


 ホテルから歩いて数分で、空海修行の洞窟――御蔵洞窟(みくろどくつ)に着いた。
 むき出しの断崖、その最下部にぽっかり空いた二つの洞窟。洞窟の間は十メートルほどだろうか。いずれも穴の前に鳥居が建てられている。

☆ 双子洞窟外観
双子洞窟外観

 夕方の太陽が山の上に見えるので、洞窟は東方に開いているようだ。弘法大師修行の地とある解説の石碑によると、向かって左(西側)を御蔵洞窟(みくろどくつ)と言い、そちらは住居として、右(東側)の神明窟(じんみょうくつ)が修行の場だと書かれている。

☆ 双子洞窟中間より太平洋を見る
洞窟より太平洋を見る

 地図によるとこの双子洞窟は室戸岬の突端ではなく、東側海岸沿い一キロほど北にある。空海が真言百万遍の修行をするとき、洞窟の中で行ったことは間違いないだろう。私はそのことを知ったとき、洞窟は単に雨宿りのためのものだろうと思った。そして、なぜ岬の突端で修行しなかったのか、と不思議で仕方なかった。
 だが、自分の目で見て納得した。室戸岬の最先端数キロの範囲内で、聖地として最もふさわしい場所を探すなら、この双子洞窟以外にはないと。つまり、双子洞窟のある場所は単なる雨宿りのための洞窟ではない。太龍寺のある南の舎心が嶽がとても美しい場所だったように、双子洞窟は室戸岬の聖地なのである(^o^)。

☆ 双子洞窟西側「御蔵洞(みくろど)窟」
双子洞窟西側「御蔵洞(みくろど)窟」

 私はまず向かって左側(西側)の洞窟の前に立った。鳥居の下に標識があり、「五所神社」とある。そして、「御祭神、大国主命(おおくにぬしのみこと)」と書かれていた。
 洞窟の入り口は数メートルほどの幅と高さ。内部は狭いが奥行きは深い。十メートルはたっぷりあり、高さも同じくらいある。そして、水滴がぽたぽた落ちて地面は所々濡れている。
 中に入ると背筋に震えが走った。奥にはコンクリの基壇が設けられ、中央に仏像が安置されている。通路の両側にも小石仏がたくさん並んでいる。そして、洞窟内部から奇妙な声が聞こえてくる。
 ギャーギャー、トゥルルルルと鳴いている。コウモリだろうか。ちょっと不気味だ。右奥は真っ暗で動物の声はそちらから聞こえてくる。洞窟にはまだ奥があるように見えた。

☆ みくろど窟内部
みくろど窟内部

 私は仏像前まで進んで、入り口を振り返った。入り口は思った以上に小さな《窓》だった。それでも、下部の陸地、真ん中に太平洋の水平線、そして上部の空――それらが三段となってしっかり見える。確かに空と海が見える。だが、ここから眺める空と太平洋は雄大な景色ではない。妙に息苦しい空と海である(-_-)。弘法大師空海の名に感じられる太平洋の雄大さは、この洞穴の中からは感じられないと思った。

☆ みくろど窟内より眺める窓の外(^_^;)
みくろど窟内より眺める窓の外

 それからみくろど窟を出て向かって右側(東側)の洞窟へ行った。
 こちらにも鳥居があり、その前の標識に「神明宮(じんみょうぐう?)」とある。さらに、「御祭神、大日□貴オオヒルメノムチ」(□は雨冠の下に女の漢字)とあり、「天照皇大神の別名」と注釈があった。

☆ 双子洞窟東側「神明(じんみょう)窟」
双子洞窟東側「神明(じんみょう)窟」

 私は「天照皇大神」の文字を見てあっと叫んだ。同時に「天照皇大神」の読みを思い出した。
 天照皇大神とは「あまてらすおおみかみ」ではないか。南の舎心が嶽山頂の小さな祠に祀(まつ)られていた名も、天照皇大神(あまてらすおおみかみ)だった。ここ双子洞窟でも全く同じ名を見出したのである。

 私は思いがけないつながりに驚くとともに、あるひらめきを感じた(^.^)。
 私はこの双子洞窟は空海が求聞持法(ぐもんじほう)修行の過程で、室戸岬へ来てから発見したと思っていた(司馬氏などもその説である)。だが、それはまず違うと思った。空海は《室戸の地に双子洞窟があること――それも洞窟が東方へ開いていること》を知ってここへ来たに違いない。
 そして、双子洞窟の地もまた、巨岩が鎮座(ちんざ)まします磐座(いわくら)である。
 おそらく空海は山岳修行に明け暮れているとき、修験道の聖地として舎心が嶽を知り、次いで室戸の双子洞窟を知ったのであろう。そして、真言百万遍の修行の場としてやって来たのである。

 こちらも洞窟の中へ入ってみた。内部は五、六メートル幅で高さも同じ程度。こちらの奥行きはそれほど深くない。水滴は滴っているものの少なかった。司馬氏が『空海の風景』に書いていた通り、こちらは乾いている感じである。

☆ 東側「神明窟内より眺める空と海」
東側「神明窟内より眺める空と海」

 私は奥から入り口を振り返った。こちらの《窓》の方が大きい。景色も三段に分けられ、陸地、海、青空と見えた。かなり広々と見渡すことができる。ここから明日未明、明けの明星を見るかと思うとわくわくする気持ちだった。(続)



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